周期・時期・回旋―正常分娩の「物差し」を正しく持つ
第103回医師国家試験 G問題 第15問
国試問題にチャレンジ
正しいのはどれか。
- a.陣痛周期2分は過強陣痛である。
- b.妊娠37週未満で破水した場合を前期破水という。
- c.胎児が娩出してから胎盤娩出までを分娩第2期という。
- d.第1頭位の場合,第2回旋で児頭は反時計方向に回る。
- e.頭位分娩の場合,第3回旋は胎児の肩甲の分娩機転による。
対話形式の解説
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医学生
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ドクターまとめ
陣痛は分娩の進行とともに周期が短く持続が長くなるのが正常で、子宮口9〜10cmや分娩第2期では周期2分が平均であり、過強陣痛は1分以内などさらに短い場合を指します。前期破水は週数ではなく「陣痛開始前の破水」と定義され、37週未満のものはpreterm PROMとして区別されます。分娩第1期は陣痛開始から子宮口全開大、第2期は全開大から胎児娩出、第3期は胎児娩出から胎盤娩出までです。胎児の回旋は屈曲・内回旋・伸展・外回旋の順に進み、第1頭位の第2回旋は会陰側から見て反時計方向、肩甲の娩出に伴うのは第4回旋です。正常分娩の定義を正確に押さえることは、回旋異常や異常陣痛、破水後の管理といった臨床判断の土台になります。
解答・解説
正解はdです
本問は正常分娩の基本事項である「陣痛の評価」「破水の分類」「分娩経過の区分(分娩第1〜3期)」「胎児の回旋(第1〜4回旋)」をまとめて問う問題である。 【陣痛】陣痛は周期(ある陣痛の始まりから次の陣痛の始まりまで)と持続時間、あるいは子宮内圧で評価する。分娩の進行とともに周期は短く、持続は長くなるのが正常であり、子宮口開大度ごとに「平均」「過強」「微弱」の目安が定められている。 【破水】破水は時期によって分類される。陣痛開始前の破水が前期破水、陣痛開始後から子宮口全開大前までの破水が早期破水、子宮口全開大ころの破水が適時破水である。前期破水のうち妊娠37週未満のものは、特に早産期の前期破水(preterm PROM)として区別する。 【分娩経過】分娩第1期は陣痛開始から子宮口全開大まで(開口期)、第2期は子宮口全開大から胎児娩出まで(娩出期)、第3期は胎児娩出から胎盤娩出まで(後産期)である。 【胎児の回旋】児頭は産道の形に合わせて4段階の回旋をしながら進む。第1回旋は屈曲(あごを胸につけ小泉門が先進)、第2回旋は内回旋(小泉門が母体の前方へ向かう)、第3回旋は伸展(反屈)、第4回旋は外回旋(肩甲の娩出に伴う)である。第1頭位(児背が母体の左側)の場合、第2回旋では母体左側にあった小泉門が前方(恥骨側)へ回るため、会陰側から見ると児頭は反時計方向に回転する。 これらを踏まえると、正しいのは「第1頭位の場合、第2回旋で児頭は反時計方向に回る」である。
選択肢考察
- ×a. 陣痛周期2分は過強陣痛である。
日本産科婦人科学会の基準では、陣痛周期の平均は子宮口4〜6cmで3分、7〜8cmで2分30秒、9〜10cmおよび分娩第2期で2分とされる。つまり周期2分は、分娩の終盤であればむしろ平均的な陣痛である。過強陣痛とされるのは、周期が子宮口4〜6cmで1分30秒以内、7cm以上および分娩第2期で1分以内と、さらに短い場合である(持続時間では、子宮口4〜8cmで2分以上、9cm以上で1分30秒以上が過強の目安)。したがって周期2分を過強陣痛とするのは誤りである。過強陣痛は胎児機能不全や子宮破裂の原因となりうるため、子宮収縮薬使用時には特に注意が必要である。
- ×b. 妊娠37週未満で破水した場合を前期破水という。
前期破水(PROM: premature rupture of the membranes)とは、分娩開始(陣痛発来)前に卵膜が破綻して羊水が流出することをいい、妊娠週数は定義に含まれない。正期産でも陣痛前に破水すれば前期破水である。妊娠37週未満に起こった前期破水は、早産期の前期破水(preterm PROM、pPROM)として区別され、早産や絨毛膜羊膜炎、臍帯脱出、胎児の肺低形成(特に妊娠中期の破水)などの問題を起こしやすい。選択肢は「週数」で前期破水を定義しており、誤りである。
- ×c. 胎児が娩出してから胎盤娩出までを分娩第2期という。
胎児娩出から胎盤娩出までは分娩第3期(後産期)である。分娩第2期(娩出期)は子宮口全開大から胎児娩出までを指す。分娩第1期(開口期)は分娩開始(陣痛周期がおおむね10分以内、または1時間に6回以上になった時点)から子宮口全開大までである。なお、胎盤娩出後の約2時間は分娩第4期と呼ばれることがあり、弛緩出血など分娩後異常出血に注意して観察する時期である。
- ○d. 第1頭位の場合,第2回旋で児頭は反時計方向に回る。
第1頭位とは、頭位で児背が母体の左側にある胎位である。骨盤入口部は横に長い楕円形であるため、児頭は矢状縫合を横径に一致させて進入し、このとき小泉門は母体の左側にある。骨盤の中を進んで出口部(縦に長い形)に近づくと、児頭は矢状縫合を縦径に合わせるように回転し、小泉門が母体の前方(恥骨結合側)へ向かう。これが第2回旋(内回旋)である。母体の左側にあった小泉門が前方へ移動する動きは、会陰側から見ると反時計方向の回転となる。第2頭位(児背が母体の右側)では逆に時計方向に回る。したがって本選択肢は正しい。
- ×e. 頭位分娩の場合,第3回旋は胎児の肩甲の分娩機転による。
第3回旋は児頭の伸展(反屈)である。第2回旋を終えた児頭は、後頭部の項部(うなじ)を恥骨結合の下縁に当て、ここを支点として顔を反らせるように伸展し、前頭、顔面、おとがいの順に会陰から娩出される。第1回旋(屈曲)とは逆向きの運動である。肩甲の分娩機転によって起こるのは第4回旋(外回旋)である。児頭の娩出後、横径で骨盤に進入していた肩甲が出口部の縦径に合わせて回転するため、娩出された児頭も一緒に回り、後頭部が再び母体の側方(第1頭位では左側)を向く。第2回旋とは逆方向の回転となる。
陣痛の評価(日本産科婦人科学会の基準、陣痛周期)
・子宮口4〜6cm: 平均3分、過強1分30秒以内、微弱6分30秒以上 ・子宮口7〜8cm: 平均2分30秒、過強1分以内、微弱6分以上 ・子宮口9〜10cm: 平均2分、過強1分以内、微弱4分以上 ・分娩第2期: 平均2分、過強1分以内、微弱は初産婦4分以上・経産婦3分30秒以上 持続時間は分娩の進行とともに長くなり、平均はおおむね40〜70秒である。
破水の時期による分類
・前期破水: 陣痛開始前の破水 ・早期破水: 陣痛開始後、子宮口全開大前の破水 ・適時破水: 子宮口全開大ころの破水(正常) ・遅滞破水: 子宮口全開大後も破水せず、卵膜が残っている状態
分娩の時期区分
・第1期(開口期): 分娩開始〜子宮口全開大 ・第2期(娩出期): 子宮口全開大〜胎児娩出 ・第3期(後産期): 胎児娩出〜胎盤娩出 ・(第4期: 胎盤娩出後約2時間)
胎児の回旋(頭位分娩の分娩機転)
・第1回旋(屈曲): あごを胸につけて屈曲し、小泉門が先進部となる。最も小さい周囲(小斜径周囲)で産道を通過できる。 ・第2回旋(内回旋): 矢状縫合が骨盤の横径から縦径に向かって回り、小泉門が母体の前方を向く。第1頭位で反時計方向、第2頭位で時計方向。 ・第3回旋(伸展・反屈): 項部を恥骨結合下縁に当てて支点とし、児頭が伸展して娩出される。 ・第4回旋(外回旋): 肩甲が骨盤出口の縦径に合わせて回旋するため、娩出された児頭の後頭が母体の側方へ戻る。第2回旋とは逆方向。
回旋異常の例
・前方前頭位(第1回旋の異常)、後方後頭位(第2回旋で小泉門が後方へ回る異常)、低在横定位(第2回旋が起こらず矢状縫合が横径のまま下降した状態)など。
POINT
・陣痛周期2分は分娩終盤の平均的な周期であり、過強陣痛ではない ・前期破水は「陣痛開始前の破水」で週数は問わない。37週未満のものはpreterm PROM ・第1期: 開口期、第2期: 子宮口全開大〜児娩出、第3期: 児娩出〜胎盤娩出 ・第1回旋: 屈曲、第2回旋: 内回旋、第3回旋: 伸展(反屈)、第4回旋: 外回旋(肩甲による) ・第1頭位の第2回旋は反時計方向、第2頭位は時計方向
