右から左を読むカテーテル―Swan-Ganzで「わかること・わからないこと」
第103回医師国家試験 E問題 第39問
国試問題にチャレンジ
Swan-Ganzカテーテル検査で測定できないのはどれか。
- a.心拍出量
- b.肺動脈圧
- c.左室駆出率
- d.中心静脈圧
- e.肺動脈楔入圧
対話形式の解説
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ドクターまとめ
Swan-Ganzカテーテルは静脈から挿入し、先端のバルーンで血流に乗せて右房・右室を経て肺動脈に留置するカテーテルで、左室には入りません。先端孔で肺動脈圧、バルーンで末梢肺動脈を閉塞させて肺動脈楔入圧(左房圧、ひいては左室拡張末期圧を反映)、右房内の近位側孔で中心静脈圧、熱希釈法で心拍出量、先端からの採血で混合静脈血酸素飽和度が得られます。一方、左室駆出率の算出には左室容積が必要なため測定できず、心エコーや左室造影、心臓MRIなどで評価します。得られた心係数と肺動脈楔入圧はForrester分類に用いられ、急性心不全の治療方針の決定に直結します。カテーテルの位置と構造から測定項目を理解しておくことは、重症患者の循環管理を学ぶうえでの基礎となります。
解答・解説
正解はcです
Swan-Ganzカテーテル(肺動脈カテーテル)の構造と、それによって得られる血行動態指標を問う問題である。 Swan-Ganzカテーテルは先端にバルーンをもつカテーテルで、静脈(内頸静脈、鎖骨下静脈、大腿静脈など)から挿入し、バルーンを膨らませて血流に乗せることで、右房→右室→肺動脈へと進める。X線透視がなくても、先端で記録される圧波形の変化を見ながらベッドサイドで留置できる。 カテーテルには主に次の部分があり、それぞれで測定できるものが決まっている。 ・先端孔(肺動脈に位置する):肺動脈圧。バルーンを膨らませて肺動脈の末梢枝を閉塞させると肺動脈楔入圧。 ・近位側孔(先端から手前に離れた位置にあり、右房内に位置する):右房圧=中心静脈圧。心拍出量測定のための冷水の注入口にもなる。 ・先端付近のサーミスタ(温度センサー):熱希釈法による心拍出量。 ・先端孔からの採血:混合静脈血酸素飽和度。 つまり、このカテーテルは右心系と肺動脈に置かれ、左室の中には入らない。左室の容積を測る手段をもたないため、左室駆出率は求められない。「右心系の圧と、そこから推定される左心系の圧、そして心拍出量がわかる検査」と理解しておけばよい。
選択肢考察
- ×a. 心拍出量
熱希釈法で測定できる。近位側孔から右房内に一定量の冷たい生理食塩水(またはブドウ糖液)を急速に注入すると、冷水は右室で血液と混ざりながら肺動脈へ流れる。先端付近のサーミスタで記録した血液温度の変化曲線の面積から、Stewart-Hamiltonの原理に基づいて心拍出量が算出される(心拍出量が多いほど冷水が速く薄まり、温度変化曲線の面積は小さくなる)。体表面積で割った値が心係数であり、心不全の病態評価に用いられる。加温フィラメントを利用して心拍出量を連続的に測定できる機種もある。
- ×b. 肺動脈圧
カテーテル先端を肺動脈内に置いた状態で、先端孔から直接測定できる。収縮期・拡張期・平均肺動脈圧が得られ、肺高血圧症の診断(安静時の平均肺動脈圧の上昇)や重症度評価に用いられる。心拍出量と組み合わせることで肺血管抵抗も算出できる。
- ○c. 左室駆出率
左室駆出率(left ventricular ejection fraction:LVEF)は、(左室拡張末期容積−左室収縮末期容積)÷左室拡張末期容積で求められる、左室の収縮能の指標である。算出には左室の容積の情報が必要だが、Swan-Ganzカテーテルは右心系から肺動脈に留置されるもので左室には入らず、左室容積を測定できない。熱希釈法で得られる1回拍出量だけでは、分母となる左室拡張末期容積が分からないためLVEFは求まらない。LVEFは心エコー検査、左室造影、心臓核医学検査、心臓MRIなどで評価する。
- ×d. 中心静脈圧
カテーテルを留置すると、先端から手前に離れた位置にある近位側孔が右房内に位置するように設計されており、ここから右房圧を直接測定できる。右房圧は中心静脈圧とほぼ等しく、循環血液量(前負荷)や右心機能の評価に用いられる。
- ×e. 肺動脈楔入圧
カテーテル先端を肺動脈の末梢枝まで進めてバルーンを膨らませ、その枝の血流を一時的に遮断した状態で先端孔の圧を測ったものである。血流が止まると、先端から肺毛細血管・肺静脈を経て左房までが一続きの液柱となるため、肺動脈楔入圧は左房圧を反映し、僧帽弁狭窄などがなければ左室拡張末期圧の推定値となる。左心不全による肺うっ血の評価に重要で、Forrester分類の指標の一つである。測定後はバルーンを必ずしぼませ、肺梗塞や肺動脈損傷を防ぐ。
Swan-Ganzカテーテルで得られる主な指標と正常値の目安
・右房圧(中心静脈圧):2〜8 mmHg程度 ・肺動脈圧:収縮期15〜30 mmHg、拡張期4〜12 mmHg程度 ・肺動脈楔入圧:6〜12 mmHg程度 ・心拍出量:4〜8 L/分程度、心係数:2.5〜4.0 L/分/m²程度 ・混合静脈血酸素飽和度(SvO2):70〜75%程度。酸素の需要と供給のバランスを反映し、心拍出量の低下や貧血で低下する。
計算で求められる指標
・体血管抵抗=(平均動脈圧−右房圧)÷心拍出量 ・肺血管抵抗=(平均肺動脈圧−肺動脈楔入圧)÷心拍出量
Forrester分類
急性心筋梗塞などの急性心不全で、心係数2.2 L/分/m²と肺動脈楔入圧18 mmHgを境に4群に分ける。 ・I群:心係数・楔入圧とも正常域(肺うっ血なし、末梢循環不全なし) ・II群:楔入圧のみ上昇(肺うっ血)→利尿薬・血管拡張薬 ・III群:心係数のみ低下(末梢循環不全、脱水など)→輸液 ・IV群:両方あり(心原性ショック)→強心薬、補助循環など
主な合併症
不整脈(カテーテルが右室を刺激することによる心室性不整脈など)、肺動脈損傷・破裂、肺梗塞、感染、血栓症、気胸(穿刺時)などがある。近年は侵襲性を考慮して、心エコーなどの非侵襲的評価で代替される場面も増えている。
POINT
・Swan-Ganzカテーテルは右心系から肺動脈に留置する。 ・測定できるもの:中心静脈圧(右房圧)、右室圧、肺動脈圧、肺動脈楔入圧、心拍出量(熱希釈法)、混合静脈血酸素飽和度。 ・肺動脈楔入圧は左房圧、ひいては左室拡張末期圧を反映する。 ・左室駆出率は左室容積が必要なため測定できない(心エコーなどで評価)。 ・Forrester分類:心係数2.2 L/分/m²、肺動脈楔入圧18 mmHgで4群に分ける。
