両手をパッと広げる赤ちゃん―写真1枚で見抜くMoro反射と原始反射の時間軸
第103回医師国家試験 E問題 第30問
国試問題にチャレンジ
写真に示すのはどれか。

- a.探索反射
- b.把握反射
- c.Moro反射
- d.Landau反射
- e.パラシュート反射
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
仰臥位の新生児で、頭部を支える検者の手を急に下げたときに両上肢を左右対称に外転・伸展して手指を開くのはMoro反射の第1相であり、続いて抱きつくように腕を引き寄せる第2相が起こります。Moro反射は生後3〜4か月ごろに消失し、欠如は重症の中枢神経障害、6か月以降の残存は脳性麻痺など、左右差は腕神経叢麻痺や鎖骨骨折を疑う手がかりになります。探索反射や把握反射は刺激部位と反応が異なり、Landau反射やパラシュート反射は乳児期後半に出現する反応で、体位も時期も新生児の写真とは合いません。原始反射は「適切な時期に消えるか」、保護伸展反応などは「適切な時期に出現するか」という視点で整理することが、写真問題の攻略と乳児の発達評価の両方に役立ちます。
解答・解説
正解はcです
写真の読み取り
白いシーツの上に仰向け(仰臥位)に寝た新生児で、検者の手が児の後頭部から背部の後ろに差し入れられている。児は両上肢を肩から大きく外側・上方へ広げて肘を伸ばし、両手の指をいっぱいに開いている。 これは、仰臥位の児の頭部を検者の手で支えてわずかに持ち上げ、その支えを急に下げて頭を後方へ落下させたときにみられる反応の瞬間であり、Moro反射の第1相(両上肢の外転・伸展と手指の開排)にあたる。Moro反射では、この後に続いて上肢を体の前(正中)へ引き寄せて抱きつくような動き(第2相)が起こるが、写真に写っているのは第1相の一瞬である。刺激(頭部を支える検者の手)と反応(両腕を左右対称に広げ、手指を開く)の組合せから、Moro反射と判断できる。
原始反射の考え方
原始反射(新生児反射)とは、脳幹・脊髄レベルの反射回路によって胎生期から新生児期にみられる反射で、大脳皮質など上位中枢が成熟して抑制がかかるにつれて、決まった時期に消失していく。一方、立ち直り反応や平衡反応(パラシュート反射など)は、中枢神経が成熟してから出現し、その後生涯続く。 したがって、原始反射は「出現していること」と「適切な時期に消えていること」の両方が発達評価の指標となる。写真問題では、児の体位(仰臥位か腹臥位か、空中に保持されているか)、検者がどこをどう刺激しているか、児がどのような姿勢・動きをとっているかを組み合わせて各反射を区別すればよい。本問では、仰臥位の新生児が頭部を支えられた状態で両上肢を左右対称に大きく広げ、手指を開いているので、Moro反射と判断できる。
選択肢考察
- ×a. 探索反射
誤りである。探索反射(rooting reflex)は、口唇や口角の周囲を指で軽く触れると、刺激された方向へ顔を向けて口を開き、指をとらえようとする反射である。哺乳のための乳首探しに役立ち、空腹時に出やすい。口に入ったものを吸う吸啜反射とともに哺乳反射に含まれ、おおむね生後3〜4か月ごろに消失する。刺激は口の周囲への接触であり、反応も顔の向きと口の動きであって、写真のように両上肢を広げる動きではない。
- ×b. 把握反射
誤りである。把握反射には、手掌を指で圧迫すると指を屈曲させて握りしめる手掌把握反射と、足底の母趾球付近を圧迫すると全足趾が屈曲する足底把握反射がある。手掌把握反射は、自分の意思で物をつかむ随意的な把握が発達してくる生後3〜4か月前後に弱まり、遅くとも6か月ごろまでに消失する。足底把握反射は、つかまり立ちが始まる生後9〜10か月ごろまで残る。写真の児は手指を握りしめるのではなく、逆に大きく開いており、把握反射とは反応が正反対である。
- ○c. Moro反射
Moro反射は、頭部を急に後方へ落とす、大きな音を立てる、寝ている台を揺らすなど、突然の姿勢変化や刺激に対して起こる反射である。まず両上肢が外転・伸展して手指が開き(第1相)、続いて上肢が内転・屈曲して胸の前で抱きつくような動きになる(第2相)。啼泣を伴うことも多い。写真は、仰臥位で頭部を検者の手に支えられた新生児が両上肢を左右対称に外側へ大きく広げ、手指を開いた瞬間で、第1相の典型像である。在胎28〜32週ごろから出現し、生後3〜4か月ごろに消失する(頸定の時期とほぼ重なる)。 臨床的意義として、反射が全く出ない場合は重症の中枢神経障害(低酸素性虚血性脳症、核黄疸など)や全身状態の悪化を、左右差がある場合は分娩外傷による腕神経叢麻痺や鎖骨骨折・上腕骨骨折を疑う。生後6か月を過ぎても残存する場合は、脳性麻痺など中枢神経の発達障害を考える。
- ×d. Landau反射
誤りである。Landau反射は、乳児を腹臥位のまま検者の手のひらで腹部を支えて水平に持ち上げたときにみられる反応で、児は頭を持ち上げ、体幹と下肢を伸展させて弓なりの姿勢をとる。このとき頭部を他動的に前屈させると、体幹と下肢も屈曲する。生後5〜6か月ごろに明らかになり、1歳半〜2歳ごろまでみられる。頸定や体幹の伸展機能の発達をみる指標であり、腹臥位で水平に保持して評価するものである。写真は仰臥位の新生児が両腕を広げた反応であり、これには当たらない。
- ×e. パラシュート反射
誤りである。パラシュート反射は、児の体幹を支えて空中に保持し、頭から前下方へ急に傾けると、両上肢を伸展し手指を開いて体を支えようとする反応である(座位で前方・側方・後方へ倒したときに上肢を伸ばして支える反応も含めて扱われる)。転倒時に身を守るための保護伸展反応であり、前下方へのパラシュート反射は生後8〜9か月ごろから出現し、以後生涯持続する。原始反射とは異なり、出現が遅れる場合に発達遅滞や脳性麻痺を疑う。上肢を伸ばし手指を開く点は写真と似ているが、写真の児は空中に保持されているのではなく仰臥位で頭部を支えられた新生児であり、生後8〜9か月以降に出現するこの反応には当たらない。
主な原始反射と消失時期の目安
・Moro反射:頭部の急な落下などで両上肢を広げ(第1相)、続いて抱きつくように引き寄せる(第2相)。生後3〜4か月で消失。 ・探索反射・吸啜反射:口周囲の刺激で顔を向ける/口に入ったものを吸う。生後3〜4か月ごろ(吸啜反射は4〜6か月ごろ)に消失し、随意的な哺乳に移行する。 ・手掌把握反射:生後3〜4か月前後で弱まり、6か月ごろまでに消失。 ・足底把握反射:生後9〜10か月ごろ(つかまり立ちのころ)に消失。 ・非対称性緊張性頸反射(ATNR):仰臥位で頭を一側に向けると、顔の向いた側の上下肢が伸展し、後頭側の上下肢が屈曲する(フェンシングの姿勢)。生後4〜6か月ごろに消失。 ・自動歩行(原始歩行):児を立たせて前傾させると足を交互に踏み出す。生後1〜2か月ごろに消失。 ・Babinski反射:足底外側をこすると母趾が背屈し他趾が開く。乳児期は陽性が正常で、歩行が確立する1〜2歳ごろまでに陰性となる。
出現して生涯続く反応
・Landau反射:生後5〜6か月ごろ出現、2歳ごろまで。 ・パラシュート反射:生後8〜9か月ごろ出現し、生涯続く。 ・立ち直り反応・平衡反応:乳児期後半から出現し持続する。
発達評価での意義
原始反射が消えるべき時期を過ぎても残る、あるいはパラシュート反射などが出るべき時期に出ない場合は、脳性麻痺や精神運動発達遅滞などを疑う手がかりとなる。反射に左右差がある場合は、末梢神経障害(腕神経叢麻痺など)や骨折、片麻痺を考える。
POINT
・Moro反射:頭部を急に落とすと、両上肢を伸展・外転して手指を開き(第1相)、続いて抱きつくように内転する(第2相)。写真では第1相の「仰臥位で両腕を左右対称に広げ、手指を開く」姿が出題されやすい。生後3〜4か月で消失。 ・消失しない(6か月以降も残る)→脳性麻痺など中枢神経障害を疑う。 ・左右差→腕神経叢麻痺、鎖骨骨折を疑う。 ・探索反射・手掌把握反射は3〜4か月ごろ、足底把握反射は9〜10か月ごろに消失。 ・Landau反射は5〜6か月ごろ、パラシュート反射は8〜9か月ごろに出現(パラシュート反射は生涯持続)。
