StudyMed医師国家試験

熱と痛む紅斑、そして好中球―Sweet病を見抜く3つの手がかり

第103回医師国家試験 D問題 第52問

国試問題にチャレンジ

第103回 D問題 第52問

36歳の女性。顔面の紅斑と発熱とを主訴に来院した。5日前から顔面と四肢とに圧痛のある浸潤性紅斑と38℃台の発熱とを生じた。皮膚生検の病理組織像では真皮に好中球の強い浸潤を認める。顔面の写真を別に示す。  診断はどれか。

第103回 D問題 第52問の問題画像
  1. a.丹毒
  2. b.Sweet病
  3. c.皮膚筋炎
  4. d.貨幣状湿疹
  5. e.円板状エリテマトーデス

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、発熱とともに急に出てきた皮疹の診断を考える問題だ。注目したいのは「発熱」「圧痛のある浸潤性紅斑」「真皮への好中球浸潤」の3点。この3つをまとめて説明できる疾患はどれか、という視点で考えていこう。
医学生医学生
熱があって赤く腫れて痛いとなると、まず感染症を思い浮かべてしまいます。丹毒でしょうか。
ドクタードクター
自然な発想だね。丹毒は主にA群β溶血性レンサ球菌による真皮浅層の感染症で、発熱や圧痛を伴い、顔面にもできる。病理でも好中球浸潤がみられるから、共通点は多いんだ。でも、皮疹の「出かた」をよく見てほしい。
医学生医学生
顔面と四肢に同時に出ている、という点ですか。
ドクタードクター
その通り。丹毒は通常、一か所から始まって周囲へ連続的に広がる単発の病変で、境界明瞭な鮮紅色の大きな紅斑になる。顔と手足に同時多発するのは丹毒としては非典型なんだ。写真でも、前額部に盛り上がった紅斑局面がみられるけれど、一つの病変が広がっているというより、浸潤を触れる局面が散在している印象だね。
医学生医学生
感染ではないのに好中球が集まる病気……皮膚科の講義で「好中球性皮膚症」という言葉を聞いた気がします。
ドクタードクター
まさにそれがキーワード。感染を伴わずに好中球が皮膚に集まる疾患群で、その代表がSweet病、別名「急性熱性好中球性皮膚症」だ。名前そのものが今回の症例を表しているよね。
医学生医学生
急性・熱性・好中球性……全部当てはまります。Sweet病が正解ですね。
ドクタードクター
正解。Sweet病は中年女性に多く、発熱と同時期に顔面・頸部・上肢などに圧痛を伴う隆起性の紅斑が多発する。真皮乳頭層の浮腫が強いと、表面が水疱のように見える偽水疱形成を示すこともある。病理では血管炎を伴わない密な好中球浸潤が特徴だ。血液検査では好中球増多、CRP上昇、赤沈亢進を伴うことが多い。
医学生医学生
皮膚筋炎も顔に紅斑が出ますよね。CBTの勉強でヘリオトロープ疹を覚えました。
ドクタードクター
よく覚えているね。皮膚筋炎の顔面皮疹は上眼瞼の紫紅色の浮腫性紅斑で、Gottron徴候や近位筋の筋力低下を伴うのが典型。病理は表皮と真皮の境界部が障害されるinterface dermatitisが主体で、リンパ球浸潤やムチン沈着が中心だから、好中球が主役ではないんだ。
医学生医学生
円板状エリテマトーデスも顔に出ますが、似たような病理ですか。
ドクタードクター
そう、同じくinterface dermatitisのグループだ。円板状エリテマトーデスは日光露出部に鱗屑を伴う円板状紅斑ができ、毛孔の角栓や、治った後に萎縮・瘢痕を残す慢性の病気。発熱や圧痛は通常伴わない。貨幣状湿疹はどうかな。
医学生医学生
硬貨くらいの丸い湿疹で、すごくかゆいイメージです。痛みや熱とは違いますね。
ドクタードクター
その通り。貨幣状湿疹は瘙痒が強くじくじくする湿疹で、病理は表皮の海綿状態が主体。発熱も好中球浸潤も説明できない。病理像を「好中球主体」「境界部の障害」「表皮の海綿状態」と整理しておくと、鑑別がぐっと楽になるよ。
医学生医学生
病理実習で、浸潤している細胞の種類と場所を必ず確認するよう言われたのはこういうことなんですね。
ドクタードクター
そういうこと。さて臨床で大事な発展知識を押さえよう。Sweet病は上気道感染や消化管感染の後に起こるもののほか、骨髄異形成症候群や急性骨髄性白血病などの血液悪性腫瘍、潰瘍性大腸炎、妊娠、G-CSFなどの薬剤に伴って起こることがある。わが国ではHLA-B54との関連も知られている。
医学生医学生
皮膚の病気だと思って治療して終わり、ではなく、背景に血液の病気が隠れていないか調べる必要があるんですね。
ドクタードクター
その姿勢がとても大切。診断時には血算などで基礎疾患を検索する。治療は副腎皮質ステロイドの全身投与がよく効き、ヨウ化カリウムやコルヒチンなども使われる。また、針反応が陽性になることがあり、同じ好中球性皮膚症のBehçet病や壊疽性膿皮症とセットで覚えておくといい。
医学生医学生
結節性紅斑も熱と痛い紅斑が出ますが、あれは下腿でしたよね。
ドクタードクター
そう、結節性紅斑は下腿伸側の皮下結節で、病理は脂肪隔壁の脂肪織炎。分布と病変の深さで区別できる。発熱と有痛性紅斑を見たら、分布・経過・病理の3方向から絞り込む習慣をつけよう。

まとめ

急性の発熱とともに顔面・頸部・四肢に圧痛を伴う浸潤性紅斑が多発し、病理で血管炎を伴わない真皮の密な好中球浸潤を認めれば、好中球性皮膚症の代表であるSweet病(急性熱性好中球性皮膚症)を考えます。丹毒は単発で連続的に拡大する感染症、皮膚筋炎や円板状エリテマトーデスはリンパ球主体のinterface dermatitis、貨幣状湿疹は表皮の海綿状態が主体であり、浸潤細胞と部位の違いが鑑別の鍵になります。Sweet病は好中球増多やCRP上昇を伴い、副腎皮質ステロイドの全身投与が著効します。一方で骨髄異形成症候群や急性骨髄性白血病など血液悪性腫瘍の合併があり得るため、診断時には基礎疾患の検索が欠かせません。皮疹の分布・経過・病理像を組み合わせて考える姿勢は、皮膚疾患全般の診断の基本となります。

解答・解説

正解はbです

所見の整理

・36歳女性、5日前からの急性の経過 ・顔面と四肢に多発する、圧痛を伴う浸潤性紅斑(写真では前額部に盛り上がった紅斑局面がみられる) ・38℃台の発熱が皮疹とほぼ同時に出現 ・皮膚生検:真皮に好中球が密に浸潤

診断へのプロセス

まず「発熱」と「痛みを伴う浸潤性(触れると硬く盛り上がる)紅斑」の組み合わせから、Sweet病、結節性紅斑、硬結性紅斑、Behçet病の皮膚症状、丹毒などが候補に挙がる。 次に分布をみる。結節性紅斑や硬結性紅斑はほとんどが下腿に出るので、顔面に目立つ本例には合わない。Behçet病では顔面に痤瘡(にきび)様の皮疹が出るが、口腔内アフタや外陰部潰瘍、眼症状などを伴うのが典型で、本例にその記載はない。丹毒は顔面に生じうるが、通常は一か所から連続して広がる単発の病変であり、顔面と四肢に同時に多発するという経過とは異なる。 最後に病理所見を重ねる。真皮への強い好中球浸潤は、好中球性皮膚症(neutrophilic dermatosis:感染を伴わずに好中球が皮膚に集まる疾患群)の代表であるSweet病に最も合致する。 以上から、急性発症・発熱・顔面と四肢の有痛性浸潤性紅斑・真皮の好中球浸潤という典型像がそろっており、Sweet病と診断できる。

設問の考え方

選択肢の中で「発熱」「圧痛」「真皮の好中球浸潤」の三つをすべて説明できるものを探せばよい。皮膚筋炎・円板状エリテマトーデスは表皮と真皮の境界部にリンパ球が浸潤する像(interface dermatitis)が主体、貨幣状湿疹は表皮の海綿状態(表皮細胞間の浮腫)が主体であり、いずれも好中球が主役ではない。

選択肢考察

  1. ×a.  丹毒

    丹毒は主にA群β溶血性レンサ球菌による真皮浅層の急性細菌感染症で、発熱や局所の熱感・圧痛を伴い、顔面や下腿に好発する。病理でも真皮の浮腫と好中球浸潤がみられるため、本例と共通点は多い。しかし丹毒は通常、単一の病変が周囲へ拡大していくもので、境界が明瞭な鮮紅色の大きな紅斑を呈する。本例のように顔面と四肢に比較的小型の浸潤性紅斑が同時多発する像は丹毒としては非典型である。丹毒であれば抗菌薬(ペニシリン系)が治療の中心となり、ASO(抗ストレプトリジンO抗体)上昇を参考にする。

  2. ○b.  Sweet病

    Sweet病(急性熱性好中球性皮膚症)は、発熱とともに顔面・頸部・上肢などに圧痛を伴う境界明瞭な隆起性の浸潤性紅斑(数cm大の局面)が急に多発する疾患である。紅斑の表面は真皮乳頭層の強い浮腫により水疱のように見えることがある(偽水疱形成)。病理では血管炎を伴わない真皮への密な好中球浸潤が特徴である。本例の急性発症、38℃台の発熱、顔面と四肢の有痛性浸潤性紅斑、真皮の好中球浸潤はすべてこれに合致する。血液検査では白血球(好中球)増多、CRP上昇、赤沈亢進を伴うことが多い。

  3. ×c.  皮膚筋炎

    皮膚筋炎の顔面皮疹は、上眼瞼の紫紅色の浮腫性紅斑(ヘリオトロープ疹)が特徴であり、手指関節背面の角化性紅斑(Gottron徴候)や近位筋の筋力低下を伴う。本例のように前額部などに圧痛のある浸潤性紅斑が多発する像とは異なる。また病理は表皮基底層の液状変性やリンパ球主体の浸潤、真皮のムチン沈着が中心で、好中球の強い浸潤は特徴ではない。

  4. ×d.  貨幣状湿疹

    貨幣状湿疹は硬貨大の円形の湿疹病変で、下腿や体幹・上肢に好発し、強い瘙痒を伴う。丘疹や小水疱が集まってじくじくし(滲出性)、痂皮を伴うことが多い。痛みや発熱は伴わず、病理は表皮の海綿状態とリンパ球浸潤が主体であるため、本例とは合わない。

  5. ×e.  円板状エリテマトーデス

    円板状エリテマトーデス(DLE)は顔面、耳介、頭部などの日光露出部に、鱗屑を伴う境界明瞭な円板状の紅斑が生じ、毛孔の角栓や、治癒後の萎縮・瘢痕・色素異常を残すのが特徴である。経過は慢性で、発熱や圧痛は通常伴わない。病理は表皮基底層の液状変性と、血管・付属器周囲のリンパ球浸潤が主体であり、好中球浸潤は特徴ではない。

Sweet病の概要

・別名:急性熱性好中球性皮膚症(acute febrile neutrophilic dermatosis)。好中球性皮膚症の代表疾患で、壊疽性膿皮症やBehçet病と同じグループに位置づけられる。 ・好発:中年女性に多い。わが国ではHLA-B54との関連が知られる。 ・誘因・基礎疾患:上気道感染症や消化管感染症の後に発症するもの、骨髄異形成症候群(MDS)や急性骨髄性白血病などの血液悪性腫瘍に伴うもの、潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患や妊娠に伴うもの、薬剤(G-CSF:顆粒球コロニー刺激因子など)によるものがある。血液悪性腫瘍に合併することがあるため、診断時には血算などで基礎疾患の検索を行う。 ・症状:発熱と同時期に、顔面・頸部・上肢などに有痛性の隆起性紅斑が多発する。関節痛や結膜炎を伴うことがある。針反応(皮膚への針刺激部位に膿疱・紅斑が生じる現象)が陽性となることがある。 ・検査:好中球増多、CRP上昇、赤沈亢進。 ・病理:真皮上層の著明な浮腫と、血管炎を伴わない密な好中球浸潤。 ・治療:副腎皮質ステロイドの全身投与が著効する。ほかにヨウ化カリウム、コルヒチン、ジアフェニルスルホン(DDS)なども用いられる。基礎疾患があればその治療を行う。

発熱と有痛性紅斑をきたす主な疾患の鑑別

・Sweet病:顔面・頸部・上肢に多発する隆起性局面、真皮の好中球浸潤 ・丹毒:顔面・下腿に単発で拡大する境界明瞭な鮮紅色紅斑、レンサ球菌感染、抗菌薬が有効 ・結節性紅斑:下腿伸側の皮下結節、脂肪隔壁の脂肪織炎(隔壁性脂肪織炎) ・Behçet病:口腔内アフタ、外陰部潰瘍、眼症状、結節性紅斑様皮疹、毛嚢炎様皮疹

病理像による整理

・好中球が主体:Sweet病、壊疽性膿皮症、Behçet病、丹毒・蜂窩織炎 ・表皮と真皮の境界部の障害(interface dermatitis):皮膚筋炎、エリテマトーデス ・表皮の海綿状態:湿疹・皮膚炎群

POINT

・発熱+顔面・四肢の有痛性浸潤性紅斑+真皮の好中球浸潤 → Sweet病 ・Sweet病は好中球性皮膚症の代表。好中球増多・CRP上昇を伴い、ステロイド全身投与が著効する ・MDSや急性骨髄性白血病など血液悪性腫瘍の合併を必ず検索する ・丹毒は単発で拡大する境界明瞭な紅斑(レンサ球菌感染)、皮膚筋炎はヘリオトロープ疹、DLEは瘢痕を残す円板状紅斑、貨幣状湿疹は瘙痒性の円形湿疹

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。