血算は「最初の一手」―採血管の選び方から網赤血球まで、血球検査の基本を総点検
第102回医師国家試験 F問題 第8問
国試問題にチャレンジ
血球検査で正しいのはどれか。
- a.貧血のスクリーニング検査になる。
- b.採血にはヘパリン入り採血管を用いる。
- c.採血後には採血管を氷上に静置する。
- d.平均赤血球容積はヘモグロビン値/赤血球数で求める。
- e.網赤血球数は塗抹Giemsa染色標本で測定する。
対話形式の解説
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ドクターまとめ
血球検査(血算)は白血球数・赤血球数・ヘモグロビン・ヘマトクリット・血小板数を測定する最も基本的な血液検査で、貧血のスクリーニングとなり、MCVによる分類や網赤血球数の評価で原因検索の出発点にもなります。検体はEDTA塩入り採血管で採取して室温で保存し、ヘパリンは血液ガス、クエン酸ナトリウムは凝固検査、フッ化ナトリウムは血糖と使い分けます。赤血球指数はMCV=Ht÷RBC、MCH=Hb÷RBC、MCHC=Hb÷Htで求め、網赤血球は超生体染色やフローサイトメトリーで測定し、Giemsa染色では数えません。氷冷が必要なのは血液ガスやアンモニアなど一部の項目に限られます。検体の扱いまで含めて検査を理解することは、偽値による誤診を防ぎ、正確な診療を行うための基礎となります。
解答・解説
正解はaです
血球検査(血算、全血球計算:CBC)は、白血球数、赤血球数(RBC)、ヘモグロビン濃度(Hb)、ヘマトクリット値(Ht)、血小板数を自動血球計数装置で測定し、そこから赤血球指数(MCV・MCH・MCHC)を算出する、最も基本的な血液検査である。必要に応じて白血球分画(血液像)や網赤血球数も調べる。 本問では、血球検査の目的(何のスクリーニングになるか)、検体の扱い(どの抗凝固薬入りの採血管を使い、どの温度で保存するか)、赤血球指数の計算式、網赤血球の測定法という、検査の基本的な知識が問われている。特に採血管の種類は検査ごとに異なるため、抗凝固薬の作用とあわせて整理しておくことが大切である。
選択肢考察
- ○a. 貧血のスクリーニング検査になる。
貧血は「ヘモグロビン濃度が基準値を下回った状態」と定義されるため、Hbを測定する血球検査はそのまま貧血の有無を判定する検査となる。さらに赤血球数・ヘマトクリット値から算出するMCVによって小球性・正球性・大球性に分類でき、網赤血球数を加えれば産生低下か破壊・喪失の亢進かの見当もつくため、貧血の原因検索の出発点としても有用である。白血球数・血小板数も同時にわかるので、汎血球減少や白血病などの血液疾患の拾い上げにも役立つ。なお、頻回・大量の採血自体が貧血の原因となりうる(入院患者や新生児で問題となる)点にも注意が必要である。
- ×b. 採血にはヘパリン入り採血管を用いる。
血球検査にはEDTA(エチレンジアミン四酢酸)塩入りの採血管を用いる。EDTAはカルシウムイオンをキレート(結合して除去)することで凝固を防ぎ、血球の形態への影響が比較的小さく、塗抹標本の染色性も保たれる。ヘパリンは抗凝固作用はあるものの、血小板や白血球の凝集を起こしやすく、塗抹標本の染色性も悪くするため、血球計数には適さない。ヘパリン採血管は主に血液ガス分析や一部の生化学検査に用いられる。
- ×c. 採血後には採血管を氷上に静置する。
血球検査の検体は室温で保存し、速やかに測定すればよい。氷上で冷却する必要はなく、むしろ冷却によって血小板が活性化・凝集して血小板数が見かけ上低くなったり、寒冷凝集素をもつ患者では赤血球が凝集して赤血球数の偽低値やMCVの偽高値を生じたりする。採血後すぐに氷冷するのは、血液ガス分析や、アンモニア・乳酸など採血後に値が変化しやすい項目を測定する場合である。
- ×d. 平均赤血球容積はヘモグロビン値/赤血球数で求める。
平均赤血球容積(MCV:赤血球1個あたりの平均の大きさ)は、ヘマトクリット値を赤血球数で割って求める。単位を合わせると、MCV(fL)= Ht(%)÷ RBC(×10⁶/μL)× 10 となる。ヘモグロビン値を赤血球数で割って求めるのは平均赤血球ヘモグロビン量(MCH:赤血球1個あたりのヘモグロビン量)であり、MCH(pg)= Hb(g/dL)÷ RBC(×10⁶/μL)× 10 である。本選択肢はMCHの式とMCVを取り違えている。
- ×e. 網赤血球数は塗抹Giemsa染色標本で測定する。
網赤血球(骨髄から出たばかりの若い赤血球)は、細胞内に残ったリボソームRNAが網目状に染まることからこの名がある。この網状構造は、細胞を固定しないまま染める超生体染色(ニューメチレンブルー染色やブリリアントクレシルブルー染色)で可視化するものであり、固定後に染めるGiemsa染色では網状構造として観察できない(Giemsa染色では多染性赤血球としてやや青みを帯びて見える程度である)。現在では、核酸に結合する蛍光色素を用いたフローサイトメトリー法による自動血球計数装置での測定が主流である。Giemsa染色(May-Giemsa染色、Wright-Giemsa染色など)は、白血球分画や血球の形態観察に用いる。
採血管と抗凝固薬・添加物の使い分け
・EDTA塩:カルシウムをキレートして凝固を防ぐ。血球検査(血算、血液像)、HbA1cなどに用いる。 ・クエン酸ナトリウム:カルシウムと結合して凝固を防ぐ。血液と1:9の比率で混和し、凝固検査(PT、APTT、フィブリノゲンなど)や赤血球沈降速度(この場合は1:4)に用いる。カルシウムを加えれば凝固能が回復する点が凝固検査向きの理由である。 ・フッ化ナトリウム:解糖系の酵素(エノラーゼ)を阻害し、採血後に血球がブドウ糖を消費して血糖値が下がるのを防ぐ。血糖検査に用いる。 ・ヘパリン:アンチトロンビンを介して凝固を抑える。血液ガス分析などに用いる。 ・添加物なし(凝固促進剤・分離剤入りを含む):血清を得るための採血管で、多くの生化学・免疫検査に用いる。
赤血球指数の求め方
・MCV(fL)= Ht(%)÷ RBC(×10⁶/μL)× 10:基準値はおよそ80〜100fL。 ・MCH(pg)= Hb(g/dL)÷ RBC(×10⁶/μL)× 10 ・MCHC(%またはg/dL)= Hb(g/dL)÷ Ht(%)× 100:基準値はおよそ32〜36%。
MCVによる貧血の分類の例
・小球性(MCV 80fL未満):鉄欠乏性貧血、サラセミア、慢性炎症に伴う貧血の一部、鉄芽球性貧血 ・正球性(80〜100fL):急性出血、溶血性貧血、再生不良性貧血、腎性貧血 ・大球性(100fL超):巨赤芽球性貧血(ビタミンB12・葉酸欠乏)、骨髄異形成症候群、肝疾患、網赤血球の著増
網赤血球数の意義
骨髄での赤血球産生の程度を反映する。溶血や出血からの回復期には増加し、再生不良性貧血や赤芽球癆など産生低下では減少する。
POINT
・血球検査(CBC)は貧血のスクリーニングの基本検査であり、MCVによる分類で原因を絞り込む。 ・血球検査にはEDTA採血管、凝固検査にはクエン酸ナトリウム採血管、血糖にはフッ化ナトリウム採血管を用いる。 ・血球検査の検体は室温で保存する。氷冷するのは血液ガス・アンモニアなど。 ・MCV = Ht ÷ RBC、MCH = Hb ÷ RBC、MCHC = Hb ÷ Ht。 ・網赤血球は超生体染色(ニューメチレンブルーなど)またはフローサイトメトリーで測定し、Giemsa染色では数えない。
