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10か月の赤ちゃんは何を見せてくれる?―「消える反射」から「現れる反射」へ

第101回医師国家試験 C問題 第26問

国試問題にチャレンジ

第101回 C問題 第26問

10か月の乳児の発達評価に適しているのはどれか。

  1. a.深部反射
  2. b.姿勢反射
  3. c.原始反射
  4. d.病的反射
  5. e.表在反射

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、乳児の発達をどの反射で評価するかという問題だ。ポイントは、反射には「月齢とともに変化するもの」と「神経障害の部位を調べるためのもの」があること、そして10か月という月齢が発達のどの段階にあたるかの2つだよ。
医学生医学生
乳児の発達評価といえば、まずMoro反射のような原始反射を思い浮かべてしまいます。
ドクタードクター
多くの人がそう考えるね。ただ、原始反射は脊髄や脳幹レベルで統合される反射で、上位の中枢が成熟するにつれて抑え込まれ、消えていく。Moro反射や非対称性緊張性頸反射、手の把握反射などは、おおむね生後4〜6か月頃までに消失するんだ。
医学生医学生
ということは、10か月だと主な原始反射はもう消えている時期なんですね。
ドクタードクター
その通り。原始反射は新生児期から乳児期前半の評価に向いている。では、中枢が成熟したら代わりに何が出てくると思う?
医学生医学生
小児科の講義で、パラシュート反射が出てくると習った気がします。
ドクタードクター
よく覚えているね。それが姿勢反射だ。体の傾きや重心の変化に対して頭・体幹・四肢を正しい位置に保とうとする反応の総称で、立ち直り反射、Landau反射、パラシュート反射、平衡反応などが含まれる。主に中脳から大脳皮質レベルの成熟とともに、乳児期中期から後期にかけて順に出現してくる。
医学生医学生
10か月だと、パラシュート反射はもう出ているはずですか。
ドクタードクター
パラシュート反射は生後8〜9か月頃に出現して、その後は生涯持続する。Landau反射も生後6か月頃までには見られる。10か月はおすわりが安定し、はいはいやつかまり立ちができる時期で、これらの姿勢反射がそろっていることが運動発達を支えているんだ。だから、この月齢の発達評価には姿勢反射が最も適している。
医学生医学生
逆に姿勢反射が出ていなかったら、どう考えるんでしょう。
ドクタードクター
運動発達の遅れや、脳性麻痺などの中枢神経障害を疑うきっかけになる。原始反射が消えるべき時期を過ぎても残っている場合も同じく要注意だ。「消えるべきものが消え、出るべきものが出ているか」を見るのが発達評価の基本なんだよ。
医学生医学生
深部反射や表在反射も神経診察で必ずとりますが、あれは発達の評価には使わないんですか。
ドクタードクター
いい疑問だね。腱反射、つまり深部反射は亢進すれば錐体路障害、低下・消失すれば末梢神経など下位運動ニューロンの障害を示唆する。表在反射は角膜反射や腹壁反射などで、反射弓や錐体路の障害を調べる。いずれも障害の有無や部位を推定するための検査で、月齢によって出たり消えたりする性質のものではないから、発達段階の指標にはならないんだ。
医学生医学生
病的反射はどうでしょう。OSCEの練習でBabinski反射をとったとき、乳児では陽性でも正常と聞きました。
ドクタードクター
その通りで、そこが病的反射が発達評価に向かない理由のひとつだ。乳児は錐体路の髄鞘化が未完成なので、Babinski反射は1〜2歳頃まで陽性でも異常とはいえない。10か月児で陽性でも判断材料になりにくいんだ。
医学生医学生
整理すると、原始反射は前半の評価、姿勢反射は後半の評価、それ以外の反射は神経障害の局在診断用ということですね。
ドクタードクター
完璧なまとめだ。補足すると、原始反射の中でも足の把握反射は例外的に長く残り、10〜12か月頃まで見られることがある。また、新生児期から原始反射が弱い、あるいは左右差がある場合は、中枢神経障害だけでなく分娩麻痺のような末梢の障害も考える。
医学生医学生
健診では反射だけでなく、運動や手の動きも合わせて見るんですよね。
ドクタードクター
そう。10か月なら、つかまり立ちに加えて母指と示指でものをつまむ動作が出てくる頃だ。乳幼児健診では、反射と粗大運動・微細運動のマイルストーンを組み合わせて評価する。反射の出現・消失の時期を、運動発達の流れとセットで覚えておくと臨床でも役立つよ。

まとめ

乳児の神経発達は、脊髄・脳幹レベルの原始反射が抑制されて消失し、中脳・大脳皮質レベルの姿勢反射が出現するという順序で進みます。Moro反射などの原始反射は多くが生後4〜6か月頃までに消失し、新生児期〜乳児期前半の評価に用いられます。一方、Landau反射やパラシュート反射(生後8〜9か月頃出現)などの姿勢反射は乳児期後半に出そろうため、10か月児の発達評価にはこれらの出現の確認が適しています。深部反射・表在反射・病的反射は神経障害の局在診断に用いるもので発達の指標ではなく、Babinski反射は1〜2歳頃まで陽性でも正常です。「消えるべき反射が消え、出るべき反射が出ているか」という視点は、乳幼児健診で脳性麻痺や発達遅滞を早期に見つけるための基本となります。

解答・解説

正解はbです

乳児の運動発達は、中枢神経系の成熟に伴って「脊髄・脳幹レベルの原始反射が抑制されて消えていき、代わって中脳・大脳皮質レベルの姿勢反射(立ち直り反応・保護伸展反応・平衡反応)が出現する」という順序で進む。したがって、ある月齢で評価すべき反射は、その時期に「出現しているべきもの」と「消失しているべきもの」である。 生後10か月は乳児期後半にあたり、おすわりが安定し、つかまり立ち・はいはいが可能になる時期である。この時期には、主な原始反射はすでに消えていることが多く、代わってパラシュート反射(生後8〜9か月頃出現)、Landau反射(生後6か月頃までに出現)、各種の立ち直り反射などの姿勢反射がそろっているはずである。これらが出現しているかどうかを確認することが、10か月児の神経発達を評価するうえで最も有用である。 一方、腱反射(深部反射)、病的反射、表在反射は、年齢にかかわらず錐体路障害や末梢神経障害などの神経障害の有無や部位を調べるための反射であり、発達段階を評価する目的の指標ではない。

選択肢考察

  1. ×a.  深部反射

    深部反射は腱反射とほぼ同義で、腱をたたいて筋を急に伸展させたときに起こる伸張反射である(膝蓋腱反射、アキレス腱反射、上腕二頭筋反射など)。亢進すれば上位運動ニューロン(錐体路)障害、減弱・消失すれば末梢神経や脊髄前角などの下位運動ニューロン障害を示唆し、運動麻痺の有無や障害部位の推定に用いる。新生児期から誘発でき、月齢による出現・消失の変化を示さないので、発達段階の評価には適さない。

  2. ○b.  姿勢反射

    姿勢反射は、体位や重心が変化したときに頭部・体幹・四肢の位置を正しく保とうとする反射・反応の総称で、立ち直り反射、Landau反射、パラシュート反射(保護伸展反応)、平衡反応(傾斜反応)などが含まれる。いずれも中枢神経(主に中脳〜大脳皮質)の成熟に伴って乳児期中期〜後期に順次出現する。10か月児ではパラシュート反射やLandau反射が出現しているのが正常であり、これらが認められなければ運動発達の遅れや中枢神経障害(脳性麻痺など)が疑われる。このため乳児期後半の発達評価に適している。

  3. ×c.  原始反射

    原始反射は脊髄・脳幹レベルで統合される反射で、新生児期から認められ、上位中枢の成熟とともに抑制されて消失していく。Moro反射、非対称性緊張性頸反射、手の把握反射などは生後4〜6か月頃までに消失する(足の把握反射は1歳前後まで残る)。主として新生児期〜乳児期前半の発達評価に用いられる。10か月で原始反射が残存していれば異常所見として意味をもつが、この時期の発達評価の主体は姿勢反射の出現の確認である。

  4. ×d.  病的反射

    病的反射は、正常な成人では出現せず、錐体路(皮質脊髄路)が障害されたときに誘発される反射の総称で、Babinski反射やChaddock反射が代表的である。ただし乳児では錐体路の髄鞘化が未完成のため、Babinski反射は1〜2歳頃まで陽性でも正常である。10か月児で陽性でも異常とはいえず、発達評価の指標にはならない。

  5. ×e.  表在反射

    表在反射は、皮膚や粘膜への刺激で誘発される反射で、角膜反射、腹壁反射、挙睾筋反射、肛門反射などがある。反射弓の障害(知覚路・運動路の障害)や、腹壁反射の消失のように錐体路障害の検出に用いられるもので、神経障害の局在診断のための検査である。月齢に応じて出現・消失する性質のものではないので、乳児の発達評価には用いない。

乳児の反射の発達(目安)

〈原始反射:出生時からみられ、消失していく〉 ・Moro反射: 生後4〜6か月頃に消失 ・手の把握反射: 生後3〜6か月頃に消失 ・非対称性緊張性頸反射(ATNR): 生後4〜6か月頃に消失 ・探索反射・吸啜反射: 生後4〜6か月頃に消失 ・足の把握反射: 生後10〜12か月頃に消失 〈姿勢反射:成長とともに出現する〉 ・Landau反射: 生後3〜6か月頃に出現し、2歳頃までに目立たなくなる ・パラシュート反射: 生後8〜9か月頃に出現し、生涯持続する ・立ち直り反射、平衡反応(傾斜反応): 乳児期中期〜後期に出現し、座位・立位の獲得に関わる

評価の考え方

・原始反射が消失すべき時期を過ぎても残存する、または姿勢反射が出現すべき時期に出現しない場合は、脳性麻痺などの中枢神経障害や発達遅滞を疑う。 ・逆に、原始反射が新生児期から弱い・左右差がある場合も、中枢神経障害や分娩麻痺(腕神経叢麻痺)などを考える。

10か月児の主な運動発達の目安

おすわりが安定し、はいはい・つかまり立ちが可能となる。手指では母指と示指でものをつまむ動作(つまみ動作)がみられるようになる。

POINT

・乳児期後半(10か月前後)の発達評価には、姿勢反射(パラシュート反射、Landau反射、立ち直り反射など)の出現を確認する。 ・原始反射は新生児期〜乳児期前半の評価に用い、多くは生後4〜6か月頃に消失する。 ・パラシュート反射は生後8〜9か月頃出現し、生涯持続する。 ・Babinski反射は1〜2歳頃までは陽性でも正常。 ・深部反射・病的反射・表在反射は神経障害の局在診断用であり、発達の指標ではない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。