横に入って縦に出る―分娩の3期と児頭の回旋を「形」で理解する
第101回医師国家試験 B問題 第50問
国試問題にチャレンジ
正しいのはどれか。
- a.分娩第1期は分娩開始から胎児娩出に至る期間である。
- b.分娩第2期は胎児娩出直後から胎盤娩出終了までの期間である。
- c.児頭が骨盤に進入するとき,矢状縫合は骨盤入口の横径に一致する。
- d.第2回旋で児頭は前方に屈曲し,胎児の頤部が胸部に接近する。
- e.排臨では陣痛間欠時にも児頭が陰裂間に現れ後退しなくなる。
対話形式の解説
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ドクターまとめ
分娩は「子宮口全開大」「胎児娩出」「胎盤娩出」を区切りに、第1期(開口期)、第2期(娩出期)、第3期(後産期)に分けられます。骨盤入口は前後径(産科的真結合)が最も短い横楕円形のため、児頭は短い大横径を前後径に合わせ、矢状縫合を骨盤入口の横径に一致させて進入します。その後、第1回旋(屈曲)で通過面を最小にし、第2回旋(内回旋)で縦楕円の骨盤出口に矢状縫合を合わせ、第3回旋(反屈)、第4回旋(外回旋)を経て娩出されます。陣痛間欠時に児頭が後退するのが排臨、後退しなくなるのが発露で、発露の頃には会陰保護や会陰切開の判断が求められます。骨盤と児頭の形から分娩機転を理解しておくことは、後方後頭位などの異常分娩に気づくための土台になります。
解答・解説
正解はcです
分娩経過の基本用語(分娩の3期の区分、児頭の回旋、排臨と発露)を正確に理解しているかを問う一般問題である。
分娩期の区分
分娩は子宮口の開大と胎児・胎盤の娩出を区切りとして3期に分けられる。第1期(開口期)は分娩開始(陣痛周期がおおむね10分以内、または陣痛頻度が1時間に6回以上となった時点)から子宮口全開大(約10cm)まで、第2期(娩出期)は子宮口全開大から胎児娩出まで、第3期(後産期)は胎児娩出から胎盤・卵膜の娩出完了までである。区切りとなる出来事を「子宮口全開大」「胎児娩出」「胎盤娩出」の順に覚えておけば、選択肢a・bの誤りはすぐ判断できる。
児頭の進入と回旋
骨盤入口は横に長い楕円形で、前後径(産科的真結合)が最も短い。一方、児頭は前後に長く、左右の幅(大横径)が短い。そのため児頭は、短い方の径(大横径)を骨盤入口の短い前後径に合わせ、長い方の向きである矢状縫合を骨盤入口の横径に一致させて進入する。これが選択肢cの内容であり、正しい。 その後、児頭は第1回旋(屈曲)→第2回旋(内回旋)→第3回旋(伸展・反屈)→第4回旋(外回旋)の順に回旋しながら産道を通過する。各回旋の番号と動きの対応を取り違えないことが、選択肢dを判断する鍵である。
排臨と発露
第2期の後半、陣痛発作時に児頭が陰裂間に見え、間欠時には引っ込む状態が排臨、間欠時にも引っ込まなくなった状態が発露である。選択肢eは発露の説明になっている。
選択肢考察
- ×a. 分娩第1期は分娩開始から胎児娩出に至る期間である。
誤り。分娩第1期(開口期)は分娩開始から子宮口が全開大するまでの期間である。この期間に子宮頸管の展退と子宮口の開大が進む。胎児娩出を終点とするのは第2期であり、本選択肢は第1期と第2期を合わせた範囲を第1期と述べている点で誤っている。
- ×b. 分娩第2期は胎児娩出直後から胎盤娩出終了までの期間である。
誤り。胎児娩出直後から胎盤・卵膜の娩出が終わるまでは分娩第3期(後産期)である。分娩第2期(娩出期)は子宮口全開大から胎児の娩出完了までをいい、陣痛に加えて妊婦の腹圧(いきみ)が児の娩出を進める時期である。
- ○c. 児頭が骨盤に進入するとき,矢状縫合は骨盤入口の横径に一致する。
正しい。骨盤入口面は横楕円形で、前後径である産科的真結合(約11cm以上)が横径(約13cm)より短い。児頭は前後径(約12cm)より大横径(約9.5cm)が短いため、最も狭い産科的真結合に大横径を合わせて進入するのが合理的である。その結果、児頭の前後方向に走る矢状縫合は骨盤入口の横径と一致した向き(横位)で進入し、骨盤入口に固定・嵌入する。
- ×d. 第2回旋で児頭は前方に屈曲し,胎児の頤部が胸部に接近する。
誤り。児頭が前方へ屈曲して頤部(おとがい)が胸部に近づくのは第1回旋である。この屈曲により、先進部が小泉門となり、児頭の通過面は最も小さい小斜径周囲(約32cm)の面となる。第2回旋は内回旋であり、骨盤腔内で児頭が回旋して小泉門が母体の前方(恥骨側)を向き、矢状縫合が骨盤出口の前後径に一致するようになる動きである。
- ×e. 排臨では陣痛間欠時にも児頭が陰裂間に現れ後退しなくなる。
誤り。本選択肢の記述は発露の定義である。排臨は、陣痛発作時(いきみの時)に児頭が陰裂間に見え、陣痛間欠時には腟内へ後退して見えなくなる状態をいう。分娩が進むと間欠時にも児頭が後退せず見えたままとなり、これを発露と呼ぶ。発露の頃には会陰が強く伸展するため、会陰保護や会陰切開の判断が必要になる。
分娩の3期と所要時間の目安
・第1期(開口期):分娩開始〜子宮口全開大。初産婦で10〜12時間、経産婦で4〜6時間程度。 ・第2期(娩出期):子宮口全開大〜胎児娩出。初産婦で1〜2時間、経産婦で30分〜1時間程度。 ・第3期(後産期):胎児娩出〜胎盤・卵膜娩出。15〜30分程度。 ※分娩開始は、陣痛周期が10分以内、または1時間に6回以上の規則的な陣痛が始まった時点とされる。
児頭の回旋(正常の前方後頭位)
・第1回旋(屈曲):骨盤入口〜骨盤腔で児頭が前屈し、頤部が胸に近づく。先進部は小泉門となり、通過面は小斜径周囲の最小面になる。 ・第2回旋(内回旋):骨盤腔内で児頭が回旋し、小泉門が母体前方(恥骨側)を向く。矢状縫合は横径から斜径を経て、骨盤出口の前後径に一致する。 ・第3回旋(伸展・反屈):後頭部(項部)が恥骨弓下に達すると、恥骨下縁を支点に児頭が反屈し、前頭・顔面・頤が会陰側から順に娩出される。この間、児の顔面は母体後方(仙骨側)を向く。 ・第4回旋(外回旋):児頭娩出後、肩甲が骨盤内で回旋するのに伴い、児頭は娩出前の向きに戻る。第1胎向(児背が母体左側)では顔が母体の右大腿側を、第2胎向(児背が母体右側)では左大腿側を向く。
骨盤と児頭の主な径
・骨盤入口:産科的真結合(前後径)は最短で約11cm以上、横径は約13cm。入口は横楕円形。 ・骨盤出口:前後径が横径よりも長く、縦楕円形となる。このため児頭は内回旋して矢状縫合を前後径に合わせる。 ・児頭:大横径約9.5cm、小斜径約9.5cm、前後径約12cm。
排臨・発露
・排臨:陣痛発作時に児頭が見え、間欠時に後退する。 ・発露:間欠時にも児頭が後退せず見えたままになる。
POINT
・第1期=分娩開始〜子宮口全開大、第2期=全開大〜胎児娩出、第3期=胎児娩出〜胎盤娩出。 ・骨盤入口は横楕円で、児頭は矢状縫合を入口の横径に一致させて進入する。骨盤出口は縦楕円で、矢状縫合は前後径に一致する。 ・第1回旋=屈曲(頤部が胸へ)、第2回旋=内回旋(小泉門が前方へ)、第3回旋=反屈、第4回旋=外回旋。 ・排臨=間欠時に後退する、発露=間欠時にも後退しない。
