StudyMed医師国家試験

出す・溜める・朝に高い―「作用の向き」と「分泌のタイミング」で解く下垂体ホルモン

第101回医師国家試験 B問題 第44問

国試問題にチャレンジ

第101回 B問題 第44問

正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. a.オキシトシンは射乳を促進する。
  2. b.ACTH分泌は就寝前に最高となる。
  3. c.バソプレシンは水の再吸収を減少させる。
  4. d.成長ホルモンはインスリン低血糖で増加する。
  5. e.LHは男児のテストステロンの産生を減少させる。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は下垂体ホルモンの基本を確認する問題だ。選択肢はどれも、ホルモンの作用が「促進か抑制か」、分泌が「いつ高いか」、そして「何が分泌の引き金になるか」のどれかを問うている。向きを逆にした引っかけを見抜けるかがポイントだよ。まず下垂体には前葉と後葉があるけれど、後葉から出るホルモンは何だったかな。
医学生医学生
オキシトシンとバソプレシンです。生理学の講義で、視床下部でつくられて後葉まで軸索で運ばれると習いました。
ドクタードクター
その通り。室傍核や視索上核の神経細胞で合成されて、後葉から血中に放出される。ではオキシトシンの作用は?
医学生医学生
子宮収縮と、射乳ですよね。でも母乳をつくるのはプロラクチンだったような気がして、射乳とどう違うのか少し混乱します。
ドクタードクター
そこは大事な区別だね。プロラクチンは前葉から出て乳汁を「つくる」ホルモン。オキシトシンは乳腺の腺房や乳管を取り囲む筋上皮細胞を収縮させて、できた乳汁を「押し出す」ホルモンなんだ。赤ちゃんが乳頭を吸う刺激が視床下部に伝わってオキシトシンが出る、神経内分泌反射として起こる。だからオキシトシンが射乳を促進するという記述は正しい。
医学生医学生
つくるのがプロラクチン、出すのがオキシトシン。産婦人科の実習で、陣痛促進にオキシトシンを点滴しているのも見ました。
ドクタードクター
よく結びつけたね。もう一つの後葉ホルモン、バソプレシンはどうかな。
医学生医学生
抗利尿ホルモンなので、尿を減らす、つまり水の再吸収を増やすはずです。減少させるというのは逆ですね。
ドクタードクター
正解。バソプレシンは腎集合管の主細胞にあるV2受容体に結合し、cAMPを介してアクアポリン2を管腔側の膜へ移動させる。水の通り道が増えて再吸収が促進され、尿は濃縮される。血漿浸透圧の上昇や循環血液量の減少が分泌の刺激だ。不足すれば中枢性尿崩症、過剰ならSIADHになる。
医学生医学生
次はACTHですね。就寝前に最高というのは、ストレスがたまった一日の終わりに高そうな気もしますが……。
ドクタードクター
感覚的にはそう思えるかもしれないけれど、実際は逆。ACTHとコルチゾールは早朝、起床前後に最高になり、日中にかけて下がって、深夜に最低になる。朝に体を活動モードへ切り替えるイメージで覚えるといい。就寝前はむしろ低い時間帯だから、この記述は誤りだ。
医学生医学生
Cushing症候群で深夜のコルチゾールを測るのは、そのリズムが崩れるからでしたか。
ドクタードクター
その通り。本来は深夜に下がるはずのコルチゾールが下がらない、つまり日内変動の消失が診断の手がかりになる。では成長ホルモンとインスリン低血糖の関係は?
医学生医学生
成長ホルモンは血糖を上げる方向に働くので、低血糖になると分泌が増える……ということで正しいと思います。
ドクタードクター
そう。成長ホルモンはインスリン拮抗ホルモンの一つで、低血糖は強い分泌刺激になる。これを利用したのがインスリン低血糖試験で、インスリンを静注してわざと低血糖を起こし、GHやACTH・コルチゾールの反応をみる。成長ホルモン分泌不全症の診断に使われる代表的な刺激試験だよ。ほかにアルギニン、グルカゴン、GHRP-2、睡眠や運動でもGHは増える。
医学生医学生
逆に、ブドウ糖を飲ませてGHが下がらなければ先端巨大症、というのも同じ原理ですね。CBTの問題で見た気がします。
ドクタードクター
まさに表裏一体だね。刺激試験は「出ないこと」を、抑制試験は「抑えられないこと」を確かめる。最後はLHだ。
医学生医学生
男性ではLHがLeydig細胞に作用してテストステロンをつくらせるので、減少させるのは逆です。FSHはSertoli細胞で精子形成でした。
ドクタードクター
完璧。男児でも同じで、LHはテストステロン産生を促進する。テストステロンは視床下部と下垂体に負のフィードバックをかけてLHを抑える関係だ。胎児期には胎盤のhCGがLeydig細胞を刺激して外性器の男性化を促し、思春期にはLHの増加でテストステロンが上がって二次性徴が出てくる。ということで、正しいのはオキシトシンと成長ホルモンの2つだね。
医学生医学生
整理すると、作用の向きを逆にしたのがバソプレシンとLH、日内変動を逆にしたのがACTH、ということですね。
ドクタードクター
その通り。臨床での応用も少し付け加えておこう。下垂体腫瘍の術後などでは、前葉ホルモンの欠落と後葉の障害による尿崩症が同時に問題になることがある。副腎不全が隠れている状態でステロイドを補わないまま甲状腺ホルモンだけ補充すると、副腎クリーゼを誘発するおそれがあるので、補充の順番にも注意が必要だ。また、インスリン低血糖試験は意図的に低血糖を起こす検査なので、虚血性心疾患やけいれんの既往がある人では慎重に適応を判断し、医師がそばで観察しながら行う。
医学生医学生
ホルモンの生理を知っていると、検査の意味や安全管理まで理解できるんですね。
ドクタードクター
そういうこと。どのホルモンが、どこに、どちら向きに働き、いつ・何で増えるのか。この4点を表にして整理しておくと、内分泌の問題は格段に解きやすくなるよ。

まとめ

下垂体後葉のオキシトシンは乳腺の筋上皮細胞を収縮させて射乳を促し(乳汁産生はプロラクチン)、バソプレシンはV2受容体からアクアポリン2を介して集合管の水再吸収を促進します。前葉のACTH・コルチゾールは早朝に最高・深夜に最低となる日内変動を示し、その消失はCushing症候群の手がかりになります。成長ホルモンは低血糖で分泌が増えるためインスリン低血糖試験でGH分泌不全症を評価し、逆にブドウ糖負荷で抑制されないことは先端巨大症の診断に用いられます。男性ではLHがLeydig細胞のテストステロン産生を、FSHがSertoli細胞を介して精子形成を促進します。作用の向き・分泌のタイミング・分泌刺激を整理しておくことは、内分泌負荷試験の理解や下垂体疾患の臨床管理の基礎となります。

解答・解説

正解はa, dです

下垂体前葉・後葉ホルモンの作用と分泌調節の基本を問う問題である。各選択肢は、(1)ホルモンの標的と作用の向き(促進か抑制か)、(2)分泌の日内変動、(3)分泌刺激となる因子、のいずれかを問うている。 下垂体後葉ホルモン(オキシトシン、バソプレシン)は視床下部の室傍核・視索上核で合成され、軸索を通って後葉に運ばれて放出される。オキシトシンは子宮収縮と射乳、バソプレシン(抗利尿ホルモン、ADH)は腎集合管での水再吸収を担う。 下垂体前葉ホルモンのうち、ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)とコルチゾールには明瞭な日内変動があり、早朝に最高、深夜に最低となる。成長ホルモン(GH)は低血糖・睡眠・運動・アルギニンなどで分泌が刺激され、この性質は分泌刺激試験(インスリン低血糖試験など)に応用される。LH(黄体形成ホルモン)は男性では精巣のLeydig細胞に作用してテストステロン産生を促す。 これらを押さえれば、作用の向きを逆に書いた選択肢(バソプレシン、LH)や日内変動を逆にした選択肢(ACTH)を除外でき、オキシトシンと成長ホルモンの記述が正しいと判断できる。

選択肢考察

  1. ○a.  オキシトシンは射乳を促進する。

    オキシトシンは下垂体後葉から分泌され、乳腺の腺房・乳管を取り囲む筋上皮細胞を収縮させて乳汁を押し出す(射乳反射)。乳児が乳頭を吸う刺激が視床下部に伝わってオキシトシン分泌が起こる神経内分泌反射である。これに対し、乳汁を「つくる」のは下垂体前葉から分泌されるプロラクチンである。オキシトシンにはほかに分娩時の子宮平滑筋収縮作用があり、陣痛促進薬として用いられる。

  2. ×b.  ACTH分泌は就寝前に最高となる。

    ACTHとコルチゾールの分泌は早朝(起床前後)に最高となり、日中にかけて徐々に低下し、夜間(深夜、入眠後早い時間帯)に最低となる概日リズムを示す。就寝前はむしろ低値の時間帯である。Cushing症候群ではこの日内変動が消失し、深夜のコルチゾールが低下しないことが診断の手がかりになる。

  3. ×c.  バソプレシンは水の再吸収を減少させる。

    バソプレシン(抗利尿ホルモン)は腎集合管主細胞のV2受容体に結合し、cAMPを介して水チャネルであるアクアポリン2を管腔側膜へ移動させ、水の再吸収を「促進」する。その結果、尿は濃縮され尿量は減少する。血漿浸透圧の上昇や循環血液量の低下が分泌刺激となる。作用の向きが逆であり誤りである。分泌が不足すると中枢性尿崩症、過剰になるとSIADH(抗利尿ホルモン不適合分泌症候群)となる。

  4. ○d.  成長ホルモンはインスリン低血糖で増加する。

    成長ホルモンは血糖を上昇させる方向に働くホルモン(インスリン拮抗ホルモン)の一つで、低血糖は強力な分泌刺激となる。インスリンを静注して低血糖を起こし、GH(およびACTH・コルチゾール)の反応をみるインスリン低血糖試験は、成長ホルモン分泌不全症の診断に用いられる代表的な分泌刺激試験である。ほかにアルギニン、グルカゴン、GHRP-2(GH放出ペプチド)、睡眠(特に入眠直後の深睡眠)、運動、ストレスなどでもGH分泌は増加する。逆に高血糖ではGH分泌が抑制され、ブドウ糖負荷試験でGHが抑制されないことは先端巨大症の診断に用いられる。

  5. ×e.  LHは男児のテストステロンの産生を減少させる。

    男性(男児を含む)では、LHは精巣間質のLeydig細胞に作用してテストステロンの産生・分泌を「促進」する。一方FSH(卵胞刺激ホルモン)はSertoli細胞に作用して精子形成を支える。テストステロンは視床下部・下垂体に負のフィードバックをかけてLH分泌を抑える関係にある。胎児期には胎盤由来のhCGとLHがLeydig細胞を刺激して男性外性器の分化を促し、思春期にはLH分泌の増加によってテストステロンが上昇し二次性徴が現れる。

下垂体ホルモンの整理

前葉(腺下垂体): ・GH:肝でのIGF-1産生を介して成長促進、血糖上昇・脂肪分解。低血糖・睡眠・運動・アルギニンで増加、高血糖・ソマトスタチンで抑制。 ・PRL(プロラクチン):乳汁産生。視床下部からのドパミンで抑制的に調節される。 ・ACTH:副腎皮質からのコルチゾール分泌を促す。早朝高値・深夜低値の日内変動。 ・TSH:甲状腺ホルモンの合成・分泌を促す。 ・LH・FSH:性腺に作用。男性ではLH→Leydig細胞(テストステロン)、FSH→Sertoli細胞(精子形成)。女性ではFSH→卵胞発育、LHサージ→排卵・黄体形成。 後葉(神経下垂体): ・オキシトシン:射乳(筋上皮細胞収縮)、子宮収縮。 ・バソプレシン(ADH):集合管V2受容体→アクアポリン2→水再吸収促進。血管平滑筋V1受容体→血管収縮。

主な分泌刺激・抑制試験

・GH分泌不全症の診断:インスリン低血糖試験、アルギニン、グルカゴン、GHRP-2などの刺激試験でGHの低反応を確認する。 ・先端巨大症の診断:75g経口ブドウ糖負荷試験でGHが十分に抑制されない。 ・ACTH・コルチゾール系:インスリン低血糖試験やCRH試験で予備能を評価し、Cushing症候群の評価にはデキサメタゾン抑制試験や深夜コルチゾールを用いる。

日内変動のまとめ

・ACTH・コルチゾール:早朝に最高、深夜に最低。 ・GH:入眠後の深睡眠期に大きな分泌ピーク。 ・プロラクチン:睡眠中に上昇。

POINT

・射乳はオキシトシン(筋上皮細胞の収縮)、乳汁産生はプロラクチン。 ・ACTH・コルチゾールは早朝に最高、深夜に最低。 ・バソプレシンはV2受容体→アクアポリン2で集合管の水再吸収を促進する。 ・GHは低血糖で増加し、インスリン低血糖試験はGH分泌不全症の診断に使う。高血糖(ブドウ糖負荷)ではGHは抑制される。 ・男性ではLH→Leydig細胞→テストステロン産生促進、FSH→Sertoli細胞→精子形成。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。