白血球5兄弟の役割分担―「誰が何をするか」を一対一で押さえる
第101回医師国家試験 B問題 第37問
国試問題にチャレンジ
白血球と機能の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。
- a.好中球 ―― 細菌の貪食
- b.好酸球 ―― 抗原の提示
- c.好塩基球 ―― 炎症物質の放出
- d.単球 ―― 寄生虫の傷害
- e.リンパ球 ―― 凝固因子の産生
対話形式の解説
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ドクターまとめ
白血球は顆粒球(好中球・好酸球・好塩基球)、単球、リンパ球に分けられ、好中球は細菌の貪食と殺菌、好酸球は寄生虫の傷害とアレルギー、好塩基球はIgE受容体を介したヒスタミンなどの炎症物質の放出、単球(マクロファージ)は貪食と抗原提示、リンパ球は獲得免疫とNK細胞による防御を担います。本問では好酸球と単球の役割を入れ替えた選択肢や、肝臓の機能である凝固因子産生をリンパ球に結びつけた選択肢を見抜くことがポイントです。各白血球が増加する代表的な病態(細菌感染での好中球増加、アレルギーや寄生虫での好酸球増加、慢性骨髄性白血病での好塩基球増加、ウイルス感染でのリンパ球増加など)もあわせて押さえておくと、血算の分画を臨床的に読み解けるようになります。NADPHオキシダーゼ欠損による慢性肉芽腫症のように、正常な機能を理解していることが疾患の病態理解の土台になります。
解答・解説
正解はa, cです
白血球は大きく顆粒球(好中球・好酸球・好塩基球)、単球、リンパ球に分けられ、それぞれが生体防御の中で異なる役割を担っている。本問は各白血球の代表的な機能を正しく対応づけられるかを問う基本問題である。 整理の仕方としては、次のように「誰が何をするか」を一対一で覚えておくとよい。 ・好中球:細菌・真菌の貪食と殺菌(急性炎症の主役) ・好酸球:寄生虫の傷害、アレルギー反応の調節 ・好塩基球:ヒスタミンなどの化学伝達物質(炎症物質)の放出 ・単球(組織に移行するとマクロファージ):貪食と抗原提示 ・リンパ球:獲得免疫(T細胞による細胞性免疫、B細胞による抗体産生)、NK細胞による自然免疫 この対応表に照らすと、選択肢のうち b・d は好酸球と単球の役割が入れ替わっており、e はリンパ球とは無関係な肝臓の機能である。正しい組合せは好中球―細菌の貪食、好塩基球―炎症物質の放出の2つとなる。
選択肢考察
- ○a. 好中球 ―― 細菌の貪食
好中球は末梢血白血球の約40〜70%を占める最も多い白血球で、細菌感染の初期防御を担う。走化性因子(補体C5a、IL-8など)に導かれて感染部位へ遊走し、オプソニン化(抗体や補体が結合して貪食されやすくなること)された細菌を貪食する。取り込んだ細菌は、NADPHオキシダーゼが産生する活性酸素や、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)が作る次亜塩素酸、リソソーム酵素などによって殺菌・消化される。したがって「細菌の貪食」は好中球の代表的機能であり、正しい組合せである。
- ×b. 好酸球 ―― 抗原の提示
T細胞に抗原を提示する専門の抗原提示細胞は、樹状細胞、マクロファージ(単球由来)、B細胞である。好酸球の主な役割は、主要塩基性タンパク(MBP)や好酸球陽イオンタンパク(ECP)などの顆粒内容物を放出して寄生虫(特に蠕虫)を傷害することと、アレルギー反応への関与である。気管支喘息などのアレルギー疾患や寄生虫感染で増加し、免疫複合体の貪食も行うが、抗原提示は主たる機能ではない。誤りである。
- ○c. 好塩基球 ―― 炎症物質の放出
好塩基球は白血球の約1%以下と最も少ない白血球で、細胞表面に高親和性IgE受容体(FcεRI)をもつ。結合したIgEに抗原が架橋すると脱顆粒し、ヒスタミン、ヘパリンなどの顆粒内容物や、ロイコトリエンなどの脂質メディエーターを放出する。これらは血管透過性亢進、平滑筋収縮などを引き起こし、即時型(I型)アレルギーや炎症反応に関与する。組織に常在するマスト細胞(肥満細胞)も同様の働きをもつ。正しい組合せである。
- ×d. 単球 ―― 寄生虫の傷害
寄生虫の傷害を主に担うのは好酸球である。単球は血中から組織へ移行してマクロファージ(肝臓ではKupffer細胞、肺では肺胞マクロファージなど)に分化し、細菌や死細胞・異物を貪食する。さらに貪食した抗原を処理してMHCクラスII分子に載せ、ヘルパーT細胞に提示する抗原提示細胞として働くほか、IL-1、TNF-αなどのサイトカインを産生して炎症を調節する。寄生虫の傷害は単球の代表的機能ではなく、誤りである。
- ×e. リンパ球 ―― 凝固因子の産生
凝固因子(フィブリノゲン、プロトロンビン、第V・VII・IX・X因子など)の大部分は肝細胞で合成される。第VIII因子は肝類洞内皮細胞などで産生される。リンパ球はT細胞(細胞性免疫、ヘルパー・細胞傷害性機能)、B細胞(形質細胞に分化して抗体を産生)、NK細胞(ウイルス感染細胞や腫瘍細胞の傷害)からなり、免疫を担う細胞であって凝固因子の産生には関与しない。誤りである。
白血球の基準値と分画(成人の目安)
白血球数はおおむね3,300〜8,600/μL程度である。分画の目安は、好中球40〜70%、リンパ球20〜45%、単球3〜8%、好酸球1〜5%、好塩基球0〜1%である。
増加する代表的な病態
・好中球増加:細菌感染症、ストレス、副腎皮質ステロイド投与、慢性骨髄性白血病 ・好酸球増加:アレルギー疾患(気管支喘息、アトピー性皮膚炎)、寄生虫感染、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、副腎不全 ・好塩基球増加:慢性骨髄性白血病などの骨髄増殖性腫瘍、甲状腺機能低下症 ・単球増加:結核、感染性心内膜炎の回復期、慢性骨髄単球性白血病 ・リンパ球増加:ウイルス感染症(伝染性単核球症など)、百日咳、慢性リンパ性白血病
自然免疫と獲得免疫
好中球、マクロファージ、NK細胞などは抗原特異性をもたずに即座に働く自然免疫を担う。一方、T細胞・B細胞は抗原特異的な獲得免疫を担い、両者を橋渡しするのが樹状細胞やマクロファージによる抗原提示である。
好中球機能の異常
好中球のNADPHオキシダーゼ欠損による慢性肉芽腫症では、貪食はできても活性酸素による殺菌ができず、カタラーゼ陽性菌(黄色ブドウ球菌など)や真菌による感染を反復する。好中球の殺菌機構の重要性を示す疾患である。
POINT
・好中球=細菌の貪食・殺菌(活性酸素、MPO) ・好酸球=寄生虫の傷害、アレルギー ・好塩基球(およびマスト細胞)=IgE受容体を介したヒスタミンなどの炎症物質放出 ・単球/マクロファージ=貪食と抗原提示 ・リンパ球=獲得免疫(T細胞・B細胞)とNK細胞 ・凝固因子は主に肝臓で産生される
