デスモソームにⅦ型コラーゲンはない―皮膚の「細胞と接着」を水疱症から整理する
第101回医師国家試験 B問題 第26問
国試問題にチャレンジ
組合せで誤っているのはどれか。
- a.色素細胞 ―― メラノソーム
- b.Langerhans細胞 ―― Birbeck顆粒
- c.マスト細胞 ―― ヒスタミン
- d.表皮角化細胞 ―― ケラチン
- e.デスモソーム ―― Ⅶ型コラーゲン
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
表皮は主に角化細胞(ケラチン)からなり、基底層の色素細胞(メラノソームでメラニン合成)、有棘層のLangerhans細胞(Birbeck顆粒、CD1a・S-100・langerin陽性)、基底層のMerkel細胞を含み、真皮にはヒスタミンを放出するマスト細胞が分布します。デスモソームは角化細胞どうしの接着装置で、デスモグレイン・デスモコリンが細胞外で結合し、細胞内でケラチンとつながります。ⅩⅦ型コラーゲン(BP180)はヘミデスモソームの成分であり、Ⅶ型コラーゲンは基底膜直下の係留線維の主成分なので、デスモソームの構成成分ではありません。デスモグレインは天疱瘡、BP180・BP230は水疱性類天疱瘡、Ⅶ型コラーゲンは後天性表皮水疱症や栄養障害型表皮水疱症の標的となります。接着構造の位置と構成分子を整理しておくと、水疱症の鑑別や裂隙の深さの理解に直結します。
解答・解説
正解はeです
テーマ
皮膚を構成する細胞・構造と、それぞれに特徴的な細胞小器官・物質(マーカー)の対応を問う問題である。「誤っている組合せ」を選ぶ点に注意する。
皮膚の構成要素の整理
表皮は重層扁平上皮で、次の細胞からなる。 ・表皮角化細胞(ケラチノサイト):表皮の大部分を占め、基底層から角層へと分化しながらケラチンを蓄積する。 ・色素細胞(メラノサイト):基底層に存在し、メラノソームでメラニンを合成して周囲の角化細胞に受け渡す。 ・Langerhans細胞:有棘層に存在する抗原提示細胞で、Birbeck顆粒をもつ。 ・Merkel細胞:基底層に存在する触覚の受容に関わる細胞。 真皮には線維芽細胞、マスト細胞(肥満細胞)、マクロファージなどが存在する。
細胞間・細胞基質間の接着構造
・デスモソーム:角化細胞どうしをつなぐ接着装置。細胞外ではデスモグレイン・デスモコリン(カドヘリンファミリー)が結合し、細胞内ではプラコグロビン・デスモプラキンを介してケラチン(中間径フィラメント)とつながる。 ・ヘミデスモソーム:基底細胞と基底膜をつなぐ接着装置。BP180(ⅩⅦ型コラーゲン)やBP230などを含む。 ・Ⅶ型コラーゲン:基底膜(透明帯・基底板)のさらに真皮側に存在する係留線維(anchoring fibril)の主成分で、基底膜と真皮を結びつける。 したがって、Ⅶ型コラーゲンはデスモソームの構成成分ではない。接着構造とその構成分子の位置関係は、自己免疫性水疱症や先天性表皮水疱症の病態を理解するうえで重要である。
選択肢考察
- ×a. 色素細胞 ―― メラノソーム
正しい組合せである。色素細胞(メラノサイト)は神経堤由来で表皮基底層に分布し、細胞質内の小器官であるメラノソームでメラニンを合成する。メラノソーム内ではチロシナーゼの働きでチロシンからメラニンが作られ、成熟したメラノソームは樹状突起を通じて周囲の角化細胞へ受け渡される。チロシナーゼ遺伝子の異常では眼皮膚白皮症が生じる。
- ×b. Langerhans細胞 ―― Birbeck顆粒
正しい組合せである。Langerhans細胞は骨髄由来の樹状細胞で、主に表皮有棘層に存在し、皮膚に侵入した抗原を取り込んで所属リンパ節のT細胞に提示する(アレルギー性接触皮膚炎の感作にも関与する)。電子顕微鏡で観察されるテニスラケット状の細胞質内顆粒であるBirbeck顆粒が特徴で、免疫組織化学ではCD1a、S-100蛋白、langerin(CD207)が陽性となる。Langerhans細胞組織球症の診断にもこれらの所見が用いられる。
- ×c. マスト細胞 ―― ヒスタミン
正しい組合せである。マスト細胞(肥満細胞)は真皮の血管周囲などに分布し、細胞質に好塩基性(メタクロマジーを示す)の顆粒をもつ。細胞表面の高親和性IgE受容体(FcεRI)に結合したIgEが抗原によって架橋されると脱顆粒し、ヒスタミン、ヘパリン、トリプターゼなどを放出するほか、ロイコトリエンやプロスタグランジンを新たに産生する。これがⅠ型アレルギーや蕁麻疹の膨疹・瘙痒の主因となる。
- ×d. 表皮角化細胞 ―― ケラチン
正しい組合せである。表皮角化細胞(ケラチノサイト)は中間径フィラメントであるケラチンを豊富に含み、基底層から有棘層、顆粒層を経て角層へと分化する過程でケラチンを蓄積し、最終的に核を失った角質細胞となって皮膚のバリアを形成する。分化段階によって発現するケラチンの種類が異なり(基底層ではケラチン5/14、有棘層以上ではケラチン1/10)、これらの遺伝子変異は単純型表皮水疱症や表皮融解性魚鱗癬の原因となる。
- ○e. デスモソーム ―― Ⅶ型コラーゲン
誤った組合せであり、これが正解である。デスモソームは角化細胞どうしを結合する接着装置で、その構成分子はデスモグレイン、デスモコリン、プラコグロビン、デスモプラキンであり、細胞内ではケラチン(中間径フィラメント)が付着する。一方、Ⅶ型コラーゲンは基底膜直下の係留線維の主成分で、基底膜を真皮に固定する役割をもち、デスモソームとは存在部位も機能も異なる。Ⅶ型コラーゲンの遺伝子(COL7A1)変異は栄養障害型(劣性・優性)表皮水疱症を、これに対する自己抗体は後天性表皮水疱症をひき起こす。
接着構造と水疱症の対応
皮膚の接着分子が障害されると、その部位で表皮の結合が破綻して水疱が生じる。 ・デスモソーム(表皮内の細胞間接着) デスモグレイン3(±デスモグレイン1)に対する自己抗体 → 尋常性天疱瘡(粘膜病変が目立つ) デスモグレイン1に対する自己抗体 → 落葉状天疱瘡(粘膜病変はまれ) 黄色ブドウ球菌の表皮剥脱毒素がデスモグレイン1を切断 → ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS) いずれも表皮内水疱となり、Nikolsky現象が陽性となる。 ・ヘミデスモソーム(基底細胞と基底膜の接着) BP180(ⅩⅦ型コラーゲン)、BP230に対する自己抗体 → 水疱性類天疱瘡(表皮下水疱、高齢者に多い) ・係留線維(基底膜と真皮の接着) Ⅶ型コラーゲンに対する自己抗体 → 後天性表皮水疱症 COL7A1遺伝子変異 → 栄養障害型表皮水疱症 ・ケラチン(基底細胞の細胞骨格) ケラチン5/14遺伝子変異 → 単純型表皮水疱症(基底細胞内で裂ける)
表皮の層構造
深部から基底層→有棘層→顆粒層→角層(手掌・足底では顆粒層と角層の間に淡明層)。基底細胞が角層に達して剥がれ落ちるまでの表皮のターンオーバーはおよそ4週間(約45日とする記載もある)とされる。
表皮内のケラチノサイト以外の細胞
・メラノサイト(基底層):メラニン産生。悪性化すると悪性黒色腫。 ・Langerhans細胞(有棘層):抗原提示。 ・Merkel細胞(基底層):触覚受容。悪性化するとMerkel細胞癌。
POINT
・デスモソーム=角化細胞どうしの接着(デスモグレイン・デスモコリン、細胞内はケラチン)→ 天疱瘡の標的。 ・ヘミデスモソーム=基底細胞と基底膜の接着(BP180=ⅩⅦ型コラーゲン、BP230)→ 水疱性類天疱瘡の標的。 ・Ⅶ型コラーゲン=基底膜直下の係留線維 → 栄養障害型表皮水疱症(先天性)・後天性表皮水疱症。 ・メラノサイト=メラノソーム、Langerhans細胞=Birbeck顆粒(CD1a、S-100、langerin陽性)、マスト細胞=ヒスタミン(FcεRIを介する脱顆粒)、角化細胞=ケラチン。
