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白髪は寿命を縮める?―見かけの関連を生む「交絡因子」の正体

第117回医師国家試験 C問題 第3問

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第117回 C問題 第3問

交絡因子について正しいのはどれか。

  1. a.偶然誤差の一種である。
  2. b.曝露因子と関連している。
  3. c.コホート研究では発生しない。
  4. d.統計的に有意でなければ無視できる。
  5. e.データを収集した後には新しい交絡は発生しない。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は疫学の基本概念である交絡因子についての問題だ。交絡因子が成り立つ条件と、交絡が誤差の分類のどこに位置するのか、の2点を押さえれば解ける。まず、交絡とは何かを自分の言葉で説明してみようか。
医学生医学生
曝露と結果の関係を調べるときに、第三の因子が邪魔をして関連が歪んで見えること、でしょうか。
ドクタードクター
いいね。具体例で考えてみよう。白髪のある人とない人で死亡率を比べると、白髪のある人のほうが死亡率が高く見える。では白髪が死亡の原因なのかな。
医学生医学生
いえ、年齢ですね。年をとると白髪も増えるし、亡くなる人も増えます。
ドクタードクター
その通り。この年齢のように、曝露と結果の両方に関わって見かけの関連を作り出す因子が交絡因子だ。成立条件は3つあって、1つ目は曝露因子と関連していること、2つ目は曝露とは独立に結果のリスク因子であること、3つ目は曝露から結果への因果経路の途中にある中間因子ではないこと。1つ目がそのまま選択肢にあるので、「曝露因子と関連している」が正解になる。
医学生医学生
中間因子というのは、どういうものですか。
ドクタードクター
たとえば肥満が高血圧を起こし、高血圧が脳卒中を起こす、という流れでの高血圧だ。これは曝露の結果として生じるものだから交絡因子ではない。むしろ高血圧で調整してしまうと、肥満の本来の効果を過小評価してしまうんだ。年齢は白髪の結果ではないから、中間因子ではなく典型的な交絡因子といえる。
医学生医学生
交絡は偶然誤差の一種、というのはどうでしょう。研究によって結果がばらつくのも交絡のせいかと思っていました。
ドクタードクター
そこは混同しやすいね。偶然誤差は標本抽出に伴う確率的なばらつきで、標本数を増やせば小さくなる。一方、交絡は第三の因子が群間に偏って分布して推定値を一定方向にずらすもので、選択バイアス・情報バイアスと並ぶ系統誤差に分類される。標本数をいくら増やしても消えないから、偶然誤差ではない。
医学生医学生
なるほど、人数を増やしても年齢の偏りはそのまま残りますね。では、コホート研究なら交絡は起こらないというのは?前向きに追跡するので信頼性が高いと習いました。
ドクタードクター
コホート研究は時間の前後関係がはっきりする強みはあるけれど、曝露群と非曝露群は研究者が割り付けたものではない。喫煙者と非喫煙者では、年齢や飲酒習慣などの背景が違うのが普通だ。だから交絡は症例対照研究や横断研究と同じく、コホート研究でも起こりうる。交絡を最も強力に抑えられるのは無作為化比較試験で、未知の因子も含めて群間で均等化が期待できる。
医学生医学生
臨床研究の講義で、RCTがエビデンスレベルの上位にある理由はそこにあると聞きました。統計的に有意でなければ無視できる、という記述はどうですか。
ドクタードクター
これも誤りだ。交絡因子を調整するかどうかは、有意差検定の結果ではなく、既存の文献や医学的知見に基づいて判断する。しかも交絡は見かけの関連を作るだけでなく、本当の関連を打ち消すこともある。調整して初めて関連が見えてくる場合もあるんだよ。
医学生医学生
データを集めた後には新しい交絡は発生しない、というのも何か引っかかります。
ドクタードクター
いい勘だね。交絡は曝露・結果・第三の因子の関係で生じるもので、データ収集の時期とは関係なく存在する。計画時には想定していなかった交絡因子が、後の解析や新しい知見で判明することは珍しくない。測定していない因子による未測定交絡は解析で調整できないから、観察研究の大きな限界になる。
医学生医学生
交絡には、計画段階と解析段階でどう対処すればいいんでしょう。
ドクタードクター
計画段階では無作為化、対象を特定の層に絞る限定、交絡因子をそろえるマッチング。解析段階では層化解析とMantel-Haenszel法、ロジスティック回帰やCox比例ハザードモデルなどの多変量解析、年齢調整死亡率のような標準化、傾向スコアを用いた方法がある。あわせて、第三の因子の層ごとに関連の強さそのものが異なる効果修飾とは区別しておこう。交絡は取り除くべき歪み、効果修飾は報告すべき事実だ。
医学生医学生
論文抄読会で「多変量解析で調整した」と書いてあっても、何で調整したかを確認する必要があるんですね。
ドクタードクター
その通り。調整された因子に重要な交絡因子が含まれているか、中間因子まで調整して効果を過小評価していないか。そこを読めると、臨床論文の結果を自分の患者さんに当てはめるときの判断がぐっと確かになるよ。

まとめ

交絡因子とは、曝露と結果の両方に関わって両者の関連を歪める第三の因子で、①曝露因子と関連している、②曝露とは独立に結果のリスク因子である、③因果経路上の中間因子ではない、の3条件を満たすものをいいます。交絡は偶然誤差ではなく系統誤差(バイアス)の一種で、標本数を増やしても解消されず、コホート研究を含むあらゆる観察研究で生じうるため、無作為化比較試験が最も強力な対策となります。調整の要否は有意差ではなく医学的知見で判断し、データ収集後に判明する交絡や未測定交絡にも注意が必要です。対処法には計画段階の無作為化・限定・マッチングと、解析段階の層化解析・多変量解析・標準化などがあり、中間因子や効果修飾との区別も重要です。交絡の理解は、臨床論文を批判的に読み、得られたエビデンスを日常診療に正しく生かすための基本となります。

解答・解説

正解はbです

疫学研究で「曝露(要因)」と「結果(疾病の発生など)」の関連を調べるとき、両者の両方に関わる第三の因子が存在すると、本当の関連が歪められて見えることがある。これを交絡(confounding)といい、その原因となる因子を交絡因子という。 ある因子が交絡因子となるためには、一般に次の3条件をすべて満たす必要がある。 ①曝露因子と関連している(曝露群と非曝露群で、その因子の分布が異なる)。 ②曝露とは独立に、結果に影響を与える(結果のリスク因子である)。 ③曝露から結果に至る因果経路の途中にある中間因子(曝露の結果として生じる因子)ではない。 交絡は、データの偏りによって推定値が一定方向にずれる系統誤差(バイアス)の一種と位置づけられ、標本数を増やしても消えない。したがって、研究の計画段階(無作為化、限定、マッチング)と解析段階(層化解析、多変量解析など)で対処する必要がある。 本問では、条件①をそのまま述べた「曝露因子と関連している」が正しい。

選択肢考察

  1. ×a.  偶然誤差の一種である。

    交絡は偶然誤差ではなく、系統誤差(バイアス)に分類される。偶然誤差は標本抽出に伴う確率的なばらつきで、標本数を増やすと小さくなり、信頼区間やP値で評価される。一方、交絡は第三の因子が曝露群と非曝露群に偏って分布することで推定値を一定の方向にずらすもので、標本数を増やしても解消されない。なお、選択バイアス・情報バイアスと並ぶ系統誤差の一つとして扱われる。

  2. ○b.  曝露因子と関連している。

    交絡因子の成立条件の一つが「曝露因子と関連していること」である。たとえば、白髪の有無(曝露)と死亡率(結果)の関連を調べると、白髪のある人ほど死亡率が高く見えるが、これは年齢が白髪とも死亡とも関連しているためである。年齢は白髪の結果として生じるものではないため中間因子ではなく、典型的な交絡因子となる。このように、交絡因子は曝露と関連しつつ、その結果ではない点が重要である。

  3. ×c.  コホート研究では発生しない。

    交絡はコホート研究、症例対照研究、横断研究など、あらゆる観察研究で生じうる。コホート研究でも曝露群と非曝露群は研究者が割り付けたものではないため、背景因子の分布に差が生じる。そのため、想定される交絡因子をあらかじめ測定しておき、層化解析や多変量解析で調整する必要がある。交絡の影響を最も効果的に抑えられるのは無作為化比較試験であり、無作為割付によって未知の交絡因子も含めて群間で均等化が期待できる(ただしそれでも偶然の偏りは完全には排除できない)。

  4. ×d.  統計的に有意でなければ無視できる。

    交絡因子を調整するかどうかは、その因子と曝露・結果との関連の有意差検定の結果で決めるものではない。既存の文献や医学的知見から交絡の可能性がある因子は、有意でなくても調整を検討すべきである。また、交絡因子は見かけの関連を作り出すだけでなく、真の関連を打ち消すこともあり、調整前は有意差がなかった関連が、調整によって明らかになる場合もある。

  5. ×e.  データを収集した後には新しい交絡は発生しない。

    交絡は曝露・結果・第三の因子の関係によって生じるもので、データ収集の時期とは無関係に存在する。研究計画時には想定していなかった交絡因子が、データ収集後の解析や新たな知見によって判明することは珍しくない。測定されなかった因子による交絡(未測定交絡)は解析で調整できないため、観察研究の結果を解釈する際の重要な限界となる。

疫学研究における誤差

・偶然誤差:標本抽出による確率的なばらつき。標本数を増やすと小さくなる。精度(precision)に関わる。 ・系統誤差(バイアス):一定方向への偏り。標本数を増やしても減らない。妥当性(validity)に関わる。  選択バイアス:対象者の選び方や脱落による偏り。  情報バイアス:曝露や結果の測定・分類の誤りによる偏り(思い出しバイアス、面接者バイアスなど)。  交絡:第三の因子による関連の歪み。

交絡への対処法

研究計画(デザイン)段階 ・無作為化(ランダム化):未知の交絡因子も含めて群間の分布を均等化することが期待できる。最も強力な方法。 ・限定(制限):対象者をある交絡因子の特定の層だけに限る(例:非喫煙者のみを対象にする)。 ・マッチング:症例と対照(または曝露群と非曝露群)で交絡因子をそろえる。 解析段階 ・層化解析:交絡因子の層ごとに関連を評価し、Mantel-Haenszel法などで統合する。 ・多変量解析:ロジスティック回帰分析、Cox比例ハザードモデルなどで複数の因子を同時に調整する。 ・標準化:年齢調整死亡率のように、比較集団間の年齢構成の違いを補正する(直接法・間接法)。 ・傾向スコア(propensity score)を用いたマッチングや重み付け。

中間因子との区別

曝露によって引き起こされ、結果へとつながる因子(例:肥満 → 高血圧 → 脳卒中 における高血圧)は中間因子であり、交絡因子ではない。中間因子で調整すると、本来の曝露の効果を過小評価してしまう。

効果修飾との区別

第三の因子の層によって曝露と結果の関連の強さ自体が異なる場合は効果修飾(交互作用)といい、交絡とは別の概念である。交絡は除去すべき歪みだが、効果修飾は報告すべき事実である。

POINT

・交絡因子の3条件:①曝露と関連、②結果に影響(独立したリスク因子)、③中間因子ではない。 ・交絡は系統誤差(バイアス)の一種で、偶然誤差ではない。標本数を増やしても消えない。 ・観察研究ではコホート研究を含めどの研究デザインでも生じうる。無作為化比較試験が最も交絡を抑えやすい。 ・調整の要否は有意差でなく、医学的知見に基づいて判断する。 ・対処法:計画段階(無作為化・限定・マッチング)、解析段階(層化・多変量解析・標準化)。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。