StudyMed医師国家試験

皮膚だけでは終わらない―発熱・紅斑・関節痛がそろうSweet病

第110回医師国家試験 D問題 第5問

国試問題にチャレンジ

第110回 D問題 第5問

関節痛を伴う皮膚疾患はどれか。

  1. a.類乾癬
  2. b.魚鱗癬
  3. c.Sweet病
  4. d.菌状息肉症
  5. e.自家感作性皮膚炎

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、皮膚疾患のなかで「関節痛」という皮膚以外の症状を伴うものを選ぶ問題だ。着眼点は、その病気が皮膚に限局した病態なのか、全身性の炎症として起きているのか、という区別だよ。
医学生医学生
関節痛と皮膚と聞くと、真っ先に乾癬性関節炎が浮かびます。類乾癬も名前が似ているので関係ありそうに見えますが……。
ドクタードクター
そこが最初の落とし穴だね。乾癬は乾癬性関節炎を伴いうるけれど、類乾癬は乾癬とは別の疾患なんだ。乾癬に似た軽い鱗屑を伴う紅斑が体幹や四肢に慢性に続くもので、自覚症状は乏しく、全身症状も関節痛も伴わない。
医学生医学生
名前に引っ張られてはいけないんですね。類乾癬で注意すべき点はありますか。
ドクタードクター
大局面型の局面状類乾癬は、菌状息肉症へ移行することがある点だね。だから経過観察が大切になる。
医学生医学生
その菌状息肉症は皮膚のT細胞リンパ腫ですよね。リンパ腫なら全身症状がありそうな気もします。
ドクタードクター
いい疑問だ。菌状息肉症はCD4陽性T細胞由来で、紅斑期、局面期、腫瘤期と年単位でゆっくり進む。病理では表皮内にリンパ球が入り込む表皮向性やPautrier微小膿瘍が特徴だ。進行すればリンパ節や内臓に及ぶけれど、関節痛を伴う疾患としては扱われないよ。
医学生医学生
病理実習でPautrier微小膿瘍のスライドを見ました。魚鱗癬は角化異常症なので、これも皮膚の中で完結していそうです。
ドクタードクター
その通り。魚鱗癬は角質がはがれにくくなり魚のうろこ状の鱗屑が広がる病気で、尋常性魚鱗癬はフィラグリン遺伝子変異が背景にあり、アトピー性皮膚炎を合併しやすい。伴性遺伝性魚鱗癬はステロイドスルファターゼ欠損で男児に出る。どちらも関節痛とは無縁だ。
医学生医学生
自家感作性皮膚炎は、全身に散布疹が出るので全身性といえそうな気もしますが……。
ドクタードクター
広がりは全身でも、病態は湿疹なんだ。うっ滞性皮膚炎などの原発巣が掻破や感染で悪化し、その部位で生じた物質に全身が感作されて、小丘疹が体幹や四肢に急に多発する。強いかゆみはあるけれど、関節痛などの全身症状は通常伴わない。治療の要は原発巣の治療だね。
医学生医学生
消去法でSweet病が残りました。急性熱性好中球性皮膚症という別名でしたよね。
ドクタードクター
正解。Sweet病は発熱とともに、顔面や頸部、上肢に圧痛を伴う隆起した浮腫性紅斑が急に現れる。末梢血の好中球増加やCRP上昇を伴い、関節痛・関節炎、筋肉痛、結膜炎などの全身症状がみられることがある。病理では真皮に好中球が密に浸潤するけれど、血管炎はないのがポイントだ。
医学生医学生
皮膚科の臨床実習で「痛い紅斑と熱があったら血液検査も忘れずに」と言われたのを思い出しました。
ドクタードクター
まさにそこが臨床の要点だよ。Sweet病は上気道感染に続いて起こることが多い一方、骨髄異形成症候群や急性骨髄性白血病などの血液悪性腫瘍に合併することがある。だから診断したら背景疾患を検索する必要があるんだ。G-CSFなどの薬剤が誘因になることも知られている。
医学生医学生
Behçet病と似ていると聞いたことがあります。
ドクタードクター
HLA-B54との関連が知られ、針反応が陽性になることもあって、Behçet病と症状が重なることがある。治療は副腎皮質ステロイドの全身投与がよく効き、ヨウ化カリウムやコルヒチンが使われることもあるよ。
医学生医学生
関節症状を伴う皮膚疾患は、ほかにどんなものを押さえておけばいいでしょうか。
ドクタードクター
乾癬性関節炎、掌蹠膿疱症に伴う前胸部の骨関節炎、Behçet病、Löfgren症候群などでみられる結節性紅斑、成人Still病のサーモンピンク疹、全身性エリテマトーデスやIgA血管炎あたりだね。「皮膚と全身症状がセットで出る病気」としてまとめておくと、CBTでも国試でも応用が利くよ。

まとめ

皮膚疾患は、病変が皮膚に限られるものと、発熱や関節痛などの全身症状を伴うものに分けて考えると整理しやすくなります。Sweet病は好中球性皮膚症の代表で、発熱、圧痛を伴う浮腫性紅斑、好中球増加に加え、関節痛や筋肉痛を伴うことがあり、病理では血管炎を伴わない真皮の好中球浸潤がみられます。骨髄異形成症候群や白血病などの血液悪性腫瘍に合併することがあるため背景疾患の検索が重要で、治療にはステロイドがよく効きます。一方、類乾癬、魚鱗癬、菌状息肉症、自家感作性皮膚炎は関節痛をきたさず、特に「乾癬は関節炎を伴いうるが類乾癬は伴わない」という区別は頻出です。名称の似た疾患に惑わされず病態から考える姿勢は、皮膚科に限らず鑑別診断全般で役立ちます。

解答・解説

正解はcです

本問は、皮膚疾患のうち関節痛という皮膚以外の症状(全身症状)を伴うものを選ばせる問題である。 皮膚疾患は大きく、病変がほぼ皮膚に限られるものと、発熱・関節痛・筋痛・眼症状などの全身症状を伴うものに分けて考えると整理しやすい。全身症状を伴う皮膚疾患の多くは、好中球の活性化を中心とする全身性の炎症反応(好中球性皮膚症、Behçet病など)や、膠原病・血管炎、乾癬性関節炎のような全身性の炎症性疾患である。 選択肢をこの視点でみると、類乾癬・魚鱗癬・菌状息肉症・自家感作性皮膚炎はいずれも皮膚の角化異常、皮膚の慢性炎症、皮膚のリンパ腫、湿疹の散布であり、関節痛を伴う疾患ではない。これに対しSweet病は、急な発熱とともに有痛性の紅斑が出現し、末梢血の好中球増加や関節痛・筋肉痛などの全身症状を伴う好中球性皮膚症の代表である。したがって正解はSweet病である。 なお、「乾癬」は乾癬性関節炎を伴いうるが、名前の似た「類乾癬」は関節症状を伴わない別の疾患であり、名称の類似にまどわされないことが大切である。

選択肢考察

  1. ×a.  類乾癬

    類乾癬は、乾癬に似た軽い鱗屑(皮膚表面のかさかさしたはがれ)を伴う紅斑が体幹や四肢に慢性に続く疾患群で、局面状類乾癬(小局面型・大局面型)、滴状類乾癬(急性痘瘡状苔癬状粃糠疹と慢性苔癬状粃糠疹)などに分けられる。自覚症状は乏しく、全身症状は伴わない。乾癬では5〜10%程度に乾癬性関節炎を伴うことがあるが、類乾癬は乾癬とは別の疾患であり関節痛はきたさない。なお、大局面型の局面状類乾癬は菌状息肉症へ移行することがあるため、経過観察が重要である。

  2. ×b.  魚鱗癬

    魚鱗癬は、皮膚が乾燥して魚のうろこのような鱗屑が全身に広がる角化異常症で、多くは遺伝性である。代表的な尋常性魚鱗癬はフィラグリン遺伝子の変異による常染色体(半)優性遺伝で、角質がはがれにくくなる(貯留性角化)ことで生じ、アトピー性皮膚炎を合併しやすい。伴性遺伝性魚鱗癬はステロイドスルファターゼ欠損によるX連鎖劣性遺伝で、男児に発症する。いずれも皮膚に限局した病態で、関節痛は伴わない。治療は保湿剤や角質溶解剤の外用が中心である。

  3. ○c.  Sweet病

    Sweet病(急性熱性好中球性皮膚症)は、38℃前後の発熱とともに、顔面・頸部・上肢などに圧痛を伴う隆起した浮腫性紅斑(局面)が急に出現する疾患である。末梢血の好中球増加、CRP上昇などの炎症所見を伴い、病理では真皮に好中球が密に浸潤するが、血管炎はみられない。関節痛・関節炎、筋肉痛のほか、結膜炎などの眼症状がみられることがある。上気道感染に続いて発症することが多く、骨髄異形成症候群や急性骨髄性白血病などの血液悪性腫瘍に合併することもあるため、背景疾患の検索が重要である。HLA-B54との関連が知られ、Behçet病と症状が重なることもある。治療は副腎皮質ステロイドの全身投与がよく効き、ヨウ化カリウムやコルヒチンが用いられることもある。

  4. ×d.  菌状息肉症

    菌状息肉症は皮膚に発生するT細胞リンパ腫(皮膚T細胞リンパ腫)の中で最も多い病型で、主にCD4陽性のヘルパーT細胞由来である。紅斑期(斑状期)→扁平浸潤期(局面期)→腫瘤期と、年単位でゆっくり進行し、進行するとリンパ節や内臓に浸潤する。病理では表皮内にリンパ球が入り込む表皮向性があり、Pautrier微小膿瘍が特徴的である。関節痛を伴う疾患ではない。白血化して紅皮症とリンパ節腫脹をきたす類縁疾患としてSézary症候群がある。

  5. ×e.  自家感作性皮膚炎

    自家感作性皮膚炎は、うっ滞性皮膚炎や接触皮膚炎、熱傷部などの湿疹病変(原発巣)が掻破や細菌感染で悪化したのち、その部位で生じた物質に対して全身が感作されることで、体幹・四肢に小丘疹や漿液性丘疹(散布疹)が急に多発する病態である。強いかゆみを伴うが、関節痛などの全身症状は通常伴わない。治療は原発巣の治療が最も重要で、加えてステロイド外用薬や抗ヒスタミン薬を用い、散布疹が広範囲の場合はステロイドの短期間の内服を行う。

関節症状を伴う主な皮膚疾患

・Sweet病:発熱、有痛性浮腫性紅斑、好中球増加、関節痛。 ・乾癬(乾癬性関節炎):遠位指節間関節炎、付着部炎、仙腸関節炎、爪病変。リウマトイド因子陰性。 ・掌蹠膿疱症:掌蹠膿疱症性骨関節炎(胸肋鎖骨間骨化症など前胸部の痛み)。 ・Behçet病:口腔内アフタ、結節性紅斑様皮疹、外陰部潰瘍、ぶどう膜炎、関節炎。 ・結節性紅斑:下腿の有痛性紅斑、関節痛を伴うことがある(サルコイドーシスのLöfgren症候群など)。 ・全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎、成人Still病(サーモンピンク疹)、IgA血管炎、リウマチ熱(輪状紅斑)など。

Sweet病の整理

・好中球性皮膚症の代表。真皮への好中球浸潤があるが血管炎はない。 ・誘因・背景:上気道感染、血液悪性腫瘍(骨髄異形成症候群、急性骨髄性白血病)、固形癌、薬剤(G-CSFなど)、妊娠、炎症性腸疾患など。 ・針反応(皮膚に針を刺した部位に紅斑や膿疱ができる現象)が陽性となることがあり、Behçet病と共通点が多い。 ・副腎皮質ステロイドへの反応が良好である。

名称の似た疾患に注意

乾癬と類乾癬、湿疹と自家感作性皮膚炎など、名前が似ていても病態・合併症は異なる。特に「乾癬性関節炎は乾癬に伴い、類乾癬には伴わない」は頻出の区別である。

POINT

・Sweet病:発熱・有痛性浮腫性紅斑・好中球増加に加え、関節痛・筋肉痛などの全身症状を伴う。 ・Sweet病は骨髄異形成症候群・白血病などの血液悪性腫瘍の合併に注意し、ステロイドが著効する。 ・乾癬は関節炎を伴いうるが、類乾癬は伴わない。 ・魚鱗癬(角化異常)、菌状息肉症(皮膚T細胞リンパ腫)、自家感作性皮膚炎(湿疹の散布)は関節痛をきたさない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。