StudyMed医師国家試験

移植後3週の皮疹は「炎症の赤」か「線維化の硬さ」か―急性GVHDの皮膚症状を見抜く

第108回医師国家試験 A問題 第18問

国試問題にチャレンジ

第108回 A問題 第18問

同種骨髄移植から3週後にみられる移植片対宿主病〈GVHD〉の皮膚症状はどれか。2つ選べ。

  1. a.紅皮症
  2. b.皮膚硬化
  3. c.浮腫性紅斑
  4. d.多形皮膚萎縮
  5. e.扁平苔癬様皮疹

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は同種骨髄移植後の移植片対宿主病、つまりGVHDの皮膚症状を問う問題だ。着眼点はただ一つ、「移植から3週後」という時期が急性と慢性のどちらにあたるか。そこが決まれば、皮膚所見の性質で選択肢をきれいに分けられるよ。
医学生医学生
GVHDは、ドナー由来のT細胞が患者さんの組織を異物と認識して攻撃する病態でしたよね。免疫学の講義で、拒絶反応と向きが逆だと習いました。
ドクタードクター
その理解で合っている。ドナー細胞が生着するのが移植後2~4週ごろで、ちょうどこの時期に急性GVHDが起こりやすい。急性GVHDの標的は皮膚・肝臓・消化管の3臓器で、皮疹・黄疸・下痢が代表的な症状だ。
医学生医学生
急性と慢性は移植後100日で区切るんでしたっけ。
ドクタードクター
古典的にはそうだね。ただ現在は発症時期よりも臨床像で区別する考え方が主流で、100日を過ぎてから急性型の症状が出ることも、逆のこともある。とはいえ移植後3週なら、時期的にも臨床像の面でも急性GVHDを考えるのが自然だ。
医学生医学生
では急性GVHDの皮疹はどういうものなんでしょう。
ドクタードクター
ドナーT細胞が表皮の基底細胞を攻撃して起こる炎症性の病変だから、浮腫を伴う紅斑や斑状丘疹として現れる。手掌・足底、耳介、顔面、頸部に初発しやすく、かゆみや痛みを伴うこともある。だから浮腫性紅斑は正解だ。
医学生医学生
それが重症化して全身に広がると、紅皮症になるということですか。
ドクタードクター
その通り。紅斑が融合して体表のほぼ全体が潮紅すると紅皮症で、これも急性GVHDの皮膚所見として正解。さらに進むと水疱や表皮剥離を伴い、中毒性表皮壊死症に似た状態になる。これが皮膚病変の最重症段階だ。
医学生医学生
皮膚硬化は、強皮症みたいな変化ですよね。膠原病内科の実習で、手指の皮膚がつまめない患者さんを診察しました。
ドクタードクター
いい経験をしているね。強皮症様の皮膚硬化は真皮や皮下組織の線維化で生じる、慢性GVHDの代表的な所見だ。線維化には時間がかかるから、移植後3週の急性期には合わない。関節拘縮を起こすこともある。
医学生医学生
多形皮膚萎縮は、萎縮と色素沈着・脱失、毛細血管拡張が混ざった状態でしたっけ。皮膚科の講義では皮膚筋炎で出てきた気がします。
ドクタードクター
よく覚えているね。ポイキロデルマとも呼ばれ、長く続いた炎症の結果として生じる変化だ。これも慢性GVHDに特徴的で、急性期にはみられない。
医学生医学生
扁平苔癬様皮疹も慢性のほうですか。口の中にレース状の白い病変が出るとCBTの問題集で見ました。
ドクタードクター
そう、紫紅色の扁平な丘疹に白色線条を伴う皮疹で、口腔粘膜病変を伴うこともある。慢性GVHDの特徴的な所見だ。整理すると「急性=炎症性の紅斑」「慢性=硬化・萎縮・苔癬化」という対比になる。
医学生医学生
慢性GVHDは膠原病に似た変化を全身に起こす、と考えればまとめやすいですね。ドライアイや口腔乾燥もSjögren症候群っぽいですし。
ドクタードクター
まさにそう。慢性GVHDは皮膚、口腔、眼、肝臓、肺、関節・筋膜など多臓器に及び、閉塞性細気管支炎のような重い合併症もある。発展として、急性GVHDの重症度も知っておこう。皮膚は皮疹の体表面積に占める割合で、肝臓はビリルビン値で、消化管は下痢の量で各臓器のstageを決め、それを組み合わせて全体のgradeを評価する。
医学生医学生
治療はステロイドでしょうか。
ドクタードクター
急性GVHDの第一選択は副腎皮質ステロイドの全身投与だ。予防にはシクロスポリンやタクロリムスといったカルシニューリン阻害薬とメトトレキサートの併用が基本になる。HLA不一致や非血縁ドナー、女性ドナーから男性患者への移植などは危険因子だね。
医学生医学生
輸血後GVHDもありましたよね。輸血製剤に放射線をかけるのはそのためだと臨床実習で教わりました。
ドクタードクター
その通り。輸血後GVHDは発症するとほぼ致命的なので、放射線照射による予防が何より大切だ。移植後の患者さんに皮疹が出たら薬疹や感染症との鑑別も必要になるが、まずは時期と皮疹の性質から急性か慢性かを意識すると考えやすいよ。

まとめ

同種造血幹細胞移植後2~4週ごろの生着時期には急性GVHDが起こりやすく、皮膚・肝臓・消化管が標的となって皮疹・黄疸・下痢を呈します。急性GVHDの皮膚症状はドナーT細胞による炎症性病変で、手掌・足底や耳介に初発する浮腫性紅斑・斑状丘疹から始まり、重症化すると紅皮症、さらに水疱・表皮剥離へ進展します。一方、皮膚硬化、多形皮膚萎縮、扁平苔癬様皮疹は線維化や萎縮・苔癬化といった慢性の変化で、膠原病に似た多臓器病変を起こす慢性GVHDの所見です。重症度は各臓器のstageを組み合わせて評価し、急性GVHDの治療はステロイド全身投与、予防はカルシニューリン阻害薬とメトトレキサートの併用が基本です。「急性=炎症性の紅斑、慢性=硬化・萎縮・苔癬化」という対比を押さえることは、移植後の皮疹を適切に評価する第一歩になります。

解答・解説

正解はa, cです

移植片対宿主病(graft-versus-host disease:GVHD)は、ドナーから移植された細胞に含まれる免疫担当細胞(主にT細胞)が、患者(宿主)の組織をヒト白血球抗原(HLA)などの違いから「異物」と認識して攻撃する病態である。同種造血幹細胞移植のほか、輸血や臓器移植の後にも起こりうる。 GVHDは急性と慢性に分けられる。古典的には移植後100日以内に発症するものを急性、それ以降を慢性としてきた。現在は発症時期よりも臨床像で区別する考え方が主流である(100日以降に急性型の症状が出る場合や、100日以内に慢性型の症状が出る場合もある)。 ・急性GVHD:皮膚・肝臓・消化管の3臓器が標的となる。症状は皮疹、黄疸(胆汁うっ滞型の肝障害)、下痢である。ドナー細胞が生着する移植後2~4週ごろに発症することが多い。 ・慢性GVHD:皮膚、口腔、眼、肝臓、肺、関節・筋膜など多くの臓器に、膠原病(強皮症、Sjögren症候群など)に似た線維化・硬化・萎縮性の変化を起こす。 本問の「移植から3週後」は生着の時期にあたり、急性GVHDが最も起こりやすい時期である。したがって、急性GVHDの皮膚症状を選べばよい。急性GVHDの皮疹は炎症性で、浮腫を伴う紅斑・丘疹として始まり、重症化すると全身に広がる。一方、慢性GVHDの皮膚症状は、硬化・萎縮・苔癬化などの慢性的な組織の変化が中心である。この「急性=炎症性の紅斑」「慢性=線維化・萎縮・苔癬化」という対比で選択肢を分けることができる。

選択肢考察

  1. ○a.  紅皮症

    正しい。紅皮症は、全身の皮膚のほぼすべて(体表面積のおおむね80~90%以上)が潮紅し、落屑を伴う状態である。急性GVHDの皮疹は最初は手掌・足底、耳介、顔面、頸部などの紅斑・丘疹として始まり、重症化すると融合して全身に広がり紅皮症となる。さらに進むと水疱形成や表皮剥離を伴い、中毒性表皮壊死症(TEN)に似た状態となる。紅皮症に水疱・表皮剥離を伴うものは、皮膚病変の最重症段階(stage 4)である。

  2. ×b.  皮膚硬化

    誤り。強皮症に似た皮膚硬化(sclerosis)は、真皮や皮下組織の線維化によって生じる慢性GVHDの代表的な皮膚所見である。関節の拘縮や可動域制限をきたすこともある。発症までに時間を要する線維化の変化であり、移植後3週の急性期にみられるものではない。

  3. ○c.  浮腫性紅斑

    正しい。急性GVHDの皮疹は、ドナーT細胞が表皮の基底細胞を攻撃して生じる炎症性の病変であり、浮腫を伴う紅斑や斑状丘疹として現れる。手掌・足底や耳介に初発しやすいのが特徴で、しばしば瘙痒や疼痛を伴う。皮疹が体表面積に占める割合(25%未満、25~50%、50%超など)によって重症度(stage)が評価される。

  4. ×d.  多形皮膚萎縮

    誤り。多形皮膚萎縮(ポイキロデルマ)は、皮膚の萎縮、色素沈着と色素脱失の混在、毛細血管拡張が同時にみられる状態である。慢性的な炎症の結果として生じる変化であり、慢性GVHDに特徴的な皮膚所見の一つである。急性期にはみられない。

  5. ×e.  扁平苔癬様皮疹

    誤り。扁平苔癬様皮疹は、紫紅色の扁平な丘疹が集まり、表面に光沢や細かい網目状の白色線条を伴う皮疹である。皮膚だけでなく口腔粘膜にもレース状の白色病変として現れることがある。慢性GVHDに特徴的な所見であり、移植後3週の急性期にみられるものではない。

急性GVHDと慢性GVHDの比較

・発症時期の目安:急性は移植後2~4週ごろの生着前後(古典的には100日以内)、慢性は多くが移植後3か月以降 ・主な標的臓器:急性は皮膚・肝臓・消化管、慢性は皮膚・口腔・眼・肝臓・肺・関節・筋膜など全身 ・皮膚症状:急性は浮腫性紅斑・斑状丘疹・紅皮症・水疱、慢性は扁平苔癬様皮疹・強皮症様皮膚硬化・多形皮膚萎縮・色素異常 ・その他の症状:急性は黄疸・下痢(大量の水様便)、慢性は乾燥性角結膜炎・口腔乾燥(Sjögren症候群様)、閉塞性細気管支炎、胆汁うっ滞など

急性GVHDの重症度(stage)

・皮膚:皮疹が体表面積の25%未満(stage 1)、25~50%(stage 2)、50%超(stage 3)、全身の紅皮症に水疱・表皮剥離を伴う(stage 4) ・肝臓:血清総ビリルビン値で評価 ・消化管:下痢の量で評価 各臓器のstageを組み合わせて全体の重症度(grade)を決める。

GVHDの危険因子と予防

・危険因子:HLA不一致、非血縁ドナー、高齢の患者、女性ドナーから男性患者への移植、末梢血幹細胞移植など ・予防:カルシニューリン阻害薬(シクロスポリン、タクロリムス)とメトトレキサートの併用が基本である ・治療:急性GVHDの第一選択は副腎皮質ステロイドの全身投与である

輸血後GVHD

輸血製剤中のドナーリンパ球が患者の体内で増殖して起こる。発症するとほぼ致命的であるため、輸血用血液製剤への放射線照射によって予防する。

POINT

・同種移植後早期(生着時期の2~4週ごろ)には急性GVHDが起こりやすい。標的は皮膚・肝臓・消化管で、皮疹・黄疸・下痢が三徴。 ・急性GVHDの皮膚症状:浮腫性紅斑・斑状丘疹(手掌・足底、耳介に初発)→重症化で紅皮症・水疱。 ・慢性GVHDの皮膚症状:扁平苔癬様皮疹、強皮症様皮膚硬化、多形皮膚萎縮。 ・急性と慢性の区別は、古典的には移植後100日で分けるが、現在は臨床像で区別する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。