StudyMed医師国家試験

「育休」は誰が後押しする?―次世代育成支援対策推進法と働く親を支える法律の地図

第107回医師国家試験 E問題 第2問

国試問題にチャレンジ

第107回 E問題 第2問

次世代育成支援対策推進法に規定されているのはどれか。

  1. a.育児休業
  2. b.学童保育
  3. c.産前休業
  4. d.安全衛生教育
  5. e.労働災害防止計画

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は公衆衛生の法規問題だ。妊娠・出産・子育てや労働に関わる制度が並んでいるけれど、それぞれ根拠となる法律が違う。この問題の着眼点は「次世代育成支援対策推進法が何をする法律なのか」を押さえたうえで、残りの選択肢を別の法律に振り分けられるかどうかだ。
医学生医学生
名前からすると子育て支援全般の法律なので、学童保育も入りそうな気がします。
ドクタードクター
そう思うのは自然だね。でもまず法律の性格から確認しよう。次世代法は急速な少子化を受けて2003年に制定され、子どもが健やかに生まれ育つ環境を社会全体で整えることを目的にしている。その中心にあるのが「行動計画」の策定なんだ。
医学生医学生
行動計画というのは、国や自治体が作る計画ですか。
ドクタードクター
国が策定指針を示し、都道府県・市町村が地域行動計画を、そして事業主が一般事業主行動計画を作る。特に大事なのが事業主の計画で、常時雇用する労働者が101人以上の企業では策定と届出が義務、100人以下では努力義務だ。国や自治体の機関も特定事業主として計画を作る。
医学生医学生
公衆衛生の講義で「くるみん」マークの話を聞きました。あれはこの法律の認定でしたか。
ドクタードクター
その通り。行動計画を実施して一定の基準を満たした企業が厚生労働大臣の認定を受けると「くるみん」、さらに高い水準なら「プラチナくるみん」が付与される。そしてこの行動計画の中身の柱になるのが、育児休業の取得促進、特に男性の取得率向上や、所定外労働の削減なんだ。だから選択肢の中で本法と直接結びつくのは育児休業になる。
医学生医学生
あれ、でも育児休業って育児・介護休業法で決まっているんじゃないですか。CBTの勉強ではそう覚えました。
ドクタードクター
鋭い指摘だね。育児休業を取る権利そのもの、つまり原則子が1歳になるまで休めるといった制度は育児・介護休業法に規定されている。次世代法はその取得を企業に促し、取りやすい職場環境を整えさせる役割を担っている。2024年の改正では、101人以上の企業に男性の育児休業取得状況などの把握と数値目標の設定も求められるようになった。権利は育介法、環境整備は次世代法という関係で理解しておこう。
医学生医学生
なるほど、二つの法律がセットで動いているんですね。では学童保育はどの法律ですか。
ドクタードクター
学童保育は法律上「放課後児童健全育成事業」と呼ばれ、児童福祉法に規定されている。保護者が働いていて昼間家にいない小学生に、放課後の遊びと生活の場を提供する事業だ。かつては「おおむね10歳未満」が対象だったけれど、2015年度から小学生全体に広がった。自治体の行動計画に整備目標が書かれることはあっても、事業の根拠法は児童福祉法だよ。
医学生医学生
産前休業は、産婦人科の実習で妊婦健診についたとき、助産師さんが「6週前から休めますよ」と説明していました。
ドクタードクター
いい経験だね。産前産後休業は労働基準法第65条に規定されている。産前は出産予定日の6週間前から、多胎妊娠なら14週間前から、本人の請求で休める。産後8週間は原則就業させてはならず、6週間を過ぎて本人が請求し医師が支障ないと認めた業務なら就いてよい。休業の「権利」が労基法にある点がポイントだ。
医学生医学生
残りの安全衛生教育と労働災害防止計画は、産業医学の講義で出てきた労働安全衛生法ですね。
ドクタードクター
その通り。安全衛生教育は、雇い入れ時や作業内容変更時に事業者が行う教育で、危険・有害業務には特別教育も必要になる。労働災害防止計画は厚生労働大臣がおおむね5年ごとに策定する計画で、現在は第14次計画が進んでいる。どちらも子育て支援とは別の枠組みだ。
医学生医学生
整理すると、産休は労基法、育休の権利は育介法、その取得促進が次世代法、学童保育は児童福祉法、安全衛生は安衛法、ということですね。
ドクタードクター
完璧だ。さらに広げると、妊娠・出産を理由にした不利益取扱いの禁止や妊娠中の健康管理措置は男女雇用機会均等法、母子健康手帳や乳幼児健診は母子保健法、生後1年未満の子を育てる女性の育児時間は労基法、と覚えておくと周辺問題にも対応できる。
医学生医学生
医師として関わるのは、たとえば母性健康管理指導事項連絡カードを書く場面でしょうか。
ドクタードクター
まさにそう。妊娠中の女性に通勤緩和や休憩などの措置が必要なとき、主治医がカードに記載して事業主に伝える。これは均等法に基づく仕組みだ。それに、医師自身も働く親になりうる。病院も事業主として行動計画を作る立場だから、制度を知っておくことは自分や同僚を守ることにもつながるんだ。なお次世代法は当初10年の時限立法だったが、延長を重ねて現在は2035年3月末までとなっている。

まとめ

次世代育成支援対策推進法は、少子化に対応して子どもが健やかに育つ環境を整えるため、国・自治体・事業主に行動計画の策定を求める法律で、101人以上の企業では一般事業主行動計画の策定が義務とされます。その計画の柱が育児休業の取得促進(特に男性)であり、基準を満たした企業は「くるみん」認定を受けられます。ただし育児休業の権利自体は育児・介護休業法、産前産後休業は労働基準法、学童保育(放課後児童健全育成事業)は児童福祉法、安全衛生教育や労働災害防止計画は労働安全衛生法に基づきます。「権利を定める法律」と「取得を促す法律」を区別し、制度と根拠法を対応づけて整理することが、公衆衛生の法規問題を確実に解く近道です。

解答・解説

正解はaです

次世代育成支援対策推進法(次世代法)は、急速な少子化の進行を受けて2003年(平成15年)に制定され、2005年4月から本格施行された法律である。次代の社会を担う子どもが健やかに生まれ育つ環境を整えることを目的とし、国・地方公共団体・事業主・国民それぞれの責務を定めている。 中心となるのは「行動計画」の策定である。 ・国は行動計画策定指針を示す。 ・都道府県・市町村は地域行動計画を策定できる。 ・事業主は、従業員の仕事と子育ての両立を支援するための一般事業主行動計画を策定し、届け出る。常時雇用する労働者が101人以上の企業では義務、100人以下では努力義務である。国や地方公共団体の機関は特定事業主として行動計画を策定する。 一般事業主行動計画には、育児休業の取得促進(特に男性の取得率向上)、所定外労働の削減、子育て中の従業員の勤務時間への配慮などの目標と対策を盛り込む。したがって選択肢の中で本法の規定内容と直接結びつくのは育児休業である。 解き方としては、他の選択肢が別の法律に根拠をもつことを押さえるとよい。産前休業は労働基準法、安全衛生教育と労働災害防止計画は労働安全衛生法、学童保育は児童福祉法である。このように「どの制度がどの法律に基づくか」を対応づけて覚えておくことが、公衆衛生の法規問題を解く基本となる。

選択肢考察

  1. ○a.  育児休業

    次世代法は事業主に対し、従業員が仕事と子育てを両立できるよう一般事業主行動計画の策定を求めており、その中核的な内容が育児休業の取得促進である。2024年の法改正では、101人以上の企業に対して男性の育児休業取得状況などを把握し、数値目標を設定することが義務づけられた。一定の基準を満たした企業は「くるみん」として厚生労働大臣の認定を受けられる。なお、育児休業を取得する権利そのものは育児・介護休業法(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)で定められており、次世代法はその取得を促す環境整備を担う関係にある。

  2. ×b.  学童保育

    学童保育は、法律上は放課後児童健全育成事業といい、児童福祉法に規定されている。保護者が就労などにより昼間家庭にいない小学生に対し、授業の終了後に児童館や学校の余裕教室などで適切な遊びと生活の場を提供し、健全な育成を図る事業である。かつて対象は「おおむね10歳未満」とされていたが、2015年度から小学校6年生までに拡大された。子ども・子育て支援法では地域子ども・子育て支援事業の一つに位置づけられている。

  3. ×c.  産前休業

    産前・産後休業は労働基準法第65条に規定されている。産前休業は出産予定日の6週間前(多胎妊娠では14週間前)から、本人が請求した場合に取得できる。産後休業は出産後8週間で、この期間は原則として就業させてはならない(ただし産後6週間を経過し、本人が請求して医師が支障ないと認めた業務には就かせてよい)。

  4. ×d.  安全衛生教育

    安全衛生教育は労働安全衛生法に規定されている。事業者は、労働者を雇い入れたときや作業内容を変更したときに安全衛生教育を行わなければならず、さらに危険・有害な業務に就かせる際には特別教育を行う必要がある(第59条)。新たに職務に就く職長などに対する教育(第60条)も定められている。

  5. ×e.  労働災害防止計画

    労働災害防止計画は労働安全衛生法に基づき、厚生労働大臣が労働政策審議会の意見を聴いて策定する、労働災害防止のための主要な対策や重要事項を定めた計画である。おおむね5年ごとに策定され、2023年度からは第14次計画(2023〜2027年度)が実施されている。

次世代育成支援対策推進法の要点

・目的:少子化の進行に対応し、次代を担う子どもが健やかに生まれ育つ社会の形成に資すること。 ・性格:当初は2005年度から10年間の時限立法であったが、2014年の改正で2025年3月末まで、さらに2024年の改正で2035年3月末まで延長された。 ・行動計画:国の行動計画策定指針に基づき、地方公共団体(地域行動計画)、事業主(一般事業主行動計画・特定事業主行動計画)が策定する。 ・認定制度:一定の基準を満たした企業は「くるみん」、より高い水準を満たすと「プラチナくるみん」の認定を受けられる。

働く人の妊娠・出産・育児に関する主な法律

・労働基準法:産前産後休業、育児時間(生後1年未満の子を育てる女性は1日2回各30分以上)、妊産婦の危険有害業務の就業制限、時間外労働・深夜業の制限(請求時)。 ・男女雇用機会均等法:妊娠・出産を理由とする不利益取扱いの禁止、妊娠中・出産後の健康管理(保健指導・健康診査の時間確保、医師の指導事項を守るための措置)。母性健康管理指導事項連絡カードが用いられる。 ・育児・介護休業法:育児休業(原則子が1歳まで、条件により最長2歳まで)、産後パパ育休(出生時育児休業)、子の看護等休暇、短時間勤務制度など。 ・次世代育成支援対策推進法:事業主等の行動計画策定による両立支援の環境整備。 ・児童福祉法:保育所、放課後児童健全育成事業(学童保育)など。 ・母子保健法:母子健康手帳、妊産婦・乳幼児健康診査、新生児訪問指導など。

労働安全衛生法の主な内容

安全衛生管理体制(総括安全衛生管理者、産業医、衛生管理者など)、安全衛生教育、作業環境測定、健康診断、ストレスチェック、労働災害防止計画などを定める。

POINT

・次世代育成支援対策推進法は、事業主などに仕事と子育ての両立支援の行動計画(育児休業取得促進など)の策定を求める法律。101人以上の企業は策定義務。2035年まで延長。 ・産前産後休業 → 労働基準法 ・育児休業の権利 → 育児・介護休業法 ・学童保育(放課後児童健全育成事業) → 児童福祉法 ・安全衛生教育・労働災害防止計画 → 労働安全衛生法

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。