「育休」は誰が後押しする?―次世代育成支援対策推進法と働く親を支える法律の地図
第107回医師国家試験 E問題 第2問
国試問題にチャレンジ
次世代育成支援対策推進法に規定されているのはどれか。
- a.育児休業
- b.学童保育
- c.産前休業
- d.安全衛生教育
- e.労働災害防止計画
対話形式の解説
ドクター
医学生
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医学生
ドクター
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ドクターまとめ
次世代育成支援対策推進法は、少子化に対応して子どもが健やかに育つ環境を整えるため、国・自治体・事業主に行動計画の策定を求める法律で、101人以上の企業では一般事業主行動計画の策定が義務とされます。その計画の柱が育児休業の取得促進(特に男性)であり、基準を満たした企業は「くるみん」認定を受けられます。ただし育児休業の権利自体は育児・介護休業法、産前産後休業は労働基準法、学童保育(放課後児童健全育成事業)は児童福祉法、安全衛生教育や労働災害防止計画は労働安全衛生法に基づきます。「権利を定める法律」と「取得を促す法律」を区別し、制度と根拠法を対応づけて整理することが、公衆衛生の法規問題を確実に解く近道です。
解答・解説
正解はaです
次世代育成支援対策推進法(次世代法)は、急速な少子化の進行を受けて2003年(平成15年)に制定され、2005年4月から本格施行された法律である。次代の社会を担う子どもが健やかに生まれ育つ環境を整えることを目的とし、国・地方公共団体・事業主・国民それぞれの責務を定めている。 中心となるのは「行動計画」の策定である。 ・国は行動計画策定指針を示す。 ・都道府県・市町村は地域行動計画を策定できる。 ・事業主は、従業員の仕事と子育ての両立を支援するための一般事業主行動計画を策定し、届け出る。常時雇用する労働者が101人以上の企業では義務、100人以下では努力義務である。国や地方公共団体の機関は特定事業主として行動計画を策定する。 一般事業主行動計画には、育児休業の取得促進(特に男性の取得率向上)、所定外労働の削減、子育て中の従業員の勤務時間への配慮などの目標と対策を盛り込む。したがって選択肢の中で本法の規定内容と直接結びつくのは育児休業である。 解き方としては、他の選択肢が別の法律に根拠をもつことを押さえるとよい。産前休業は労働基準法、安全衛生教育と労働災害防止計画は労働安全衛生法、学童保育は児童福祉法である。このように「どの制度がどの法律に基づくか」を対応づけて覚えておくことが、公衆衛生の法規問題を解く基本となる。
選択肢考察
- ○a. 育児休業
次世代法は事業主に対し、従業員が仕事と子育てを両立できるよう一般事業主行動計画の策定を求めており、その中核的な内容が育児休業の取得促進である。2024年の法改正では、101人以上の企業に対して男性の育児休業取得状況などを把握し、数値目標を設定することが義務づけられた。一定の基準を満たした企業は「くるみん」として厚生労働大臣の認定を受けられる。なお、育児休業を取得する権利そのものは育児・介護休業法(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)で定められており、次世代法はその取得を促す環境整備を担う関係にある。
- ×b. 学童保育
学童保育は、法律上は放課後児童健全育成事業といい、児童福祉法に規定されている。保護者が就労などにより昼間家庭にいない小学生に対し、授業の終了後に児童館や学校の余裕教室などで適切な遊びと生活の場を提供し、健全な育成を図る事業である。かつて対象は「おおむね10歳未満」とされていたが、2015年度から小学校6年生までに拡大された。子ども・子育て支援法では地域子ども・子育て支援事業の一つに位置づけられている。
- ×c. 産前休業
産前・産後休業は労働基準法第65条に規定されている。産前休業は出産予定日の6週間前(多胎妊娠では14週間前)から、本人が請求した場合に取得できる。産後休業は出産後8週間で、この期間は原則として就業させてはならない(ただし産後6週間を経過し、本人が請求して医師が支障ないと認めた業務には就かせてよい)。
- ×d. 安全衛生教育
安全衛生教育は労働安全衛生法に規定されている。事業者は、労働者を雇い入れたときや作業内容を変更したときに安全衛生教育を行わなければならず、さらに危険・有害な業務に就かせる際には特別教育を行う必要がある(第59条)。新たに職務に就く職長などに対する教育(第60条)も定められている。
- ×e. 労働災害防止計画
労働災害防止計画は労働安全衛生法に基づき、厚生労働大臣が労働政策審議会の意見を聴いて策定する、労働災害防止のための主要な対策や重要事項を定めた計画である。おおむね5年ごとに策定され、2023年度からは第14次計画(2023〜2027年度)が実施されている。
次世代育成支援対策推進法の要点
・目的:少子化の進行に対応し、次代を担う子どもが健やかに生まれ育つ社会の形成に資すること。 ・性格:当初は2005年度から10年間の時限立法であったが、2014年の改正で2025年3月末まで、さらに2024年の改正で2035年3月末まで延長された。 ・行動計画:国の行動計画策定指針に基づき、地方公共団体(地域行動計画)、事業主(一般事業主行動計画・特定事業主行動計画)が策定する。 ・認定制度:一定の基準を満たした企業は「くるみん」、より高い水準を満たすと「プラチナくるみん」の認定を受けられる。
働く人の妊娠・出産・育児に関する主な法律
・労働基準法:産前産後休業、育児時間(生後1年未満の子を育てる女性は1日2回各30分以上)、妊産婦の危険有害業務の就業制限、時間外労働・深夜業の制限(請求時)。 ・男女雇用機会均等法:妊娠・出産を理由とする不利益取扱いの禁止、妊娠中・出産後の健康管理(保健指導・健康診査の時間確保、医師の指導事項を守るための措置)。母性健康管理指導事項連絡カードが用いられる。 ・育児・介護休業法:育児休業(原則子が1歳まで、条件により最長2歳まで)、産後パパ育休(出生時育児休業)、子の看護等休暇、短時間勤務制度など。 ・次世代育成支援対策推進法:事業主等の行動計画策定による両立支援の環境整備。 ・児童福祉法:保育所、放課後児童健全育成事業(学童保育)など。 ・母子保健法:母子健康手帳、妊産婦・乳幼児健康診査、新生児訪問指導など。
労働安全衛生法の主な内容
安全衛生管理体制(総括安全衛生管理者、産業医、衛生管理者など)、安全衛生教育、作業環境測定、健康診断、ストレスチェック、労働災害防止計画などを定める。
POINT
・次世代育成支援対策推進法は、事業主などに仕事と子育ての両立支援の行動計画(育児休業取得促進など)の策定を求める法律。101人以上の企業は策定義務。2035年まで延長。 ・産前産後休業 → 労働基準法 ・育児休業の権利 → 育児・介護休業法 ・学童保育(放課後児童健全育成事業) → 児童福祉法 ・安全衛生教育・労働災害防止計画 → 労働安全衛生法
