診断書はいらない―母子健康手帳が「妊娠の届出だけ」で渡される理由
第102回医師国家試験 B問題 第11問
国試問題にチャレンジ
母子健康手帳で誤っているのはどれか。
- a.記載項目が定められている。
- b.母子保健法に基づいて交付される。
- c.交付には医師の診断書が必要である。
- d.保健と育児に関する情報を提供する。
- e.妊産婦・乳幼児の健康診査の結果を記録する。
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
母子健康手帳は母子保健法に基づく制度で、妊娠した人が市町村長に妊娠の届出を行い(第15条)、市町村がその人に手帳を交付します(第16条)。妊娠の届出は本人の申告で足り、医師の診断書は法律上不要です。これは医療機関にかかりにくい妊婦も含め、妊娠早期から母子保健サービスにつなげるための配慮です。手帳の様式は国が定めており、妊婦健診・分娩・乳幼児健診・予防接種などの記録と、保健・育児情報の提供という二つの役割をもち、妊婦健診の公費負担や保健指導への入口にもなります。制度の目的と流れを理解しておくことは、臨床で妊産婦や乳幼児の健康情報を読み取り、必要な支援につなげる力の土台となります。
解答・解説
正解はcです
母子健康手帳の法的根拠、交付の手続き、記載内容を問う基本問題である。「誤っているのはどれか」を問う形式なので、誤った記述を1つ選ぶ。 母子健康手帳は母子保健法に定められた制度であり、流れは次のとおりである。 1)妊娠した者は、速やかに市町村長に妊娠の届出を行う(母子保健法第15条)。 2)市町村は、届出をした者に母子健康手帳を交付しなければならない(同第16条)。 3)妊産婦・乳幼児は健康診査や保健指導を受けたとき、その結果を手帳に記載してもらう。 妊娠の届出は本人による自己申告であり、法律上、医師の診断書の添付は求められていない。この手続きの簡便さが、妊娠早期から行政の母子保健サービスにつなげるという制度の目的を支えている。記載項目・健診記録・情報提供という手帳の役割を理解していれば、誤りの選択肢は容易に判別できる。
選択肢考察
- ×a. 記載項目が定められている。
正しい記述である。母子健康手帳の様式は母子保健法第16条の規定に基づき、国の命令(母子保健法施行規則)で定められている。妊婦健康診査の記録欄には子宮底長、腹囲、血圧、浮腫、尿蛋白、尿糖、体重などの項目があり、分娩の状況、出生時の身長・体重、乳幼児健診の結果、予防接種の記録なども全国共通の様式で記載される。一方、健康や育児に関する情報提供の部分は、国が示す例を参考に市町村が工夫して作成することが認められている(任意記載事項)。
- ×b. 母子保健法に基づいて交付される。
正しい記述である。母子保健法第16条は「市町村は、妊娠の届出をした者に対して、母子健康手帳を交付しなければならない」と定めている。交付主体は都道府県や保健所ではなく市町村であり、市町村の母子保健サービスの窓口として機能している。
- ○c. 交付には医師の診断書が必要である。
誤った記述であり、これが正解である。母子健康手帳は妊娠の届出(母子保健法第15条)をした者に交付されるが、この届出は妊娠した本人の申告によるもので、医師の診断書の添付は法律上必要とされていない。届出書には氏名・年齢、妊娠週数、出産予定日などを記載する。受診や書類の準備を条件にしないことで、経済的・社会的な理由で医療機関にかかりにくい妊婦も含め、できるだけ早い時期に届出と手帳の交付を受けられるよう配慮されている。
- ×d. 保健と育児に関する情報を提供する。
正しい記述である。母子健康手帳には記録欄だけでなく、妊娠中の生活上の注意、栄養、妊娠・出産の異常のサイン、新生児・乳幼児の発育と発達の目安、事故予防、予防接種、子育て支援制度などの情報が掲載されている。保護者が自ら学び、適切な保健行動をとるための教材としての役割を担っている。
- ×e. 妊産婦・乳幼児の健康診査の結果を記録する。
正しい記述である。母子保健法第16条では、妊産婦や乳幼児の保護者が健康診査や保健指導を受けたときには、そのつど手帳に必要な事項の記載を受けなければならないとされている。妊婦健康診査、出産の記録、法定の1歳6か月児健康診査(満1歳6か月を超え満2歳に達しない幼児)と3歳児健康診査(満3歳を超え満4歳に達しない幼児)、その他の乳幼児健診の結果が記録され、妊娠期から乳幼児期までの健康状態を一冊で継続的に把握できる。
母子健康手帳の役割
1)記録:妊娠経過、分娩、新生児期、乳幼児健診、予防接種、発育(身長・体重の成長曲線)などを一冊に記録する。医療者が交代しても情報が引き継がれ、母と子の健康管理に活用される。 2)情報提供:妊娠・出産・育児に関する保健情報や公的支援制度を伝える。 3)行政サービスへの入口:妊娠の届出と手帳交付を機に、妊婦健康診査の公費負担(受診票の交付)、保健師による相談・訪問指導などにつながる。
母子保健法の主な内容
・母子保健に関する知識の普及、保健指導 ・健康診査:1歳6か月児健診・3歳児健診(市町村に実施義務)、妊婦健康診査など ・妊娠の届出(第15条)と母子健康手帳の交付(第16条) ・妊産婦・新生児・未熟児の訪問指導 ・低体重児(出生体重2,500g未満)の届出 ・未熟児の養育医療 ・母子健康包括支援センター(現在はこども家庭センターに再編)など
補足
・日本の母子健康手帳は妊娠期から乳幼児期までの記録を一冊にまとめた点が特徴で、海外にも普及している。外国語併記版も作成されている。 ・母子保健行政は2023年4月から厚生労働省からこども家庭庁に移管された。
POINT
・母子健康手帳は母子保健法第16条に基づき、市町村が交付する。 ・交付の前提は妊娠の届出(第15条)であり、本人の申告で足り、医師の診断書は不要である。 ・様式(記載項目)は国が定めており、健診や予防接種の記録と保健・育児情報の提供の両方の役割をもつ。 ・1歳6か月児健診・3歳児健診は市町村の実施義務である。
