StudyMed医師国家試験

「CO2を出さない」と「尽きない」は別物―再生可能エネルギーの見分け方

第109回医師国家試験 E問題 第38問

国試問題にチャレンジ

第109回 E問題 第38問

再生可能なエネルギー源はどれか。3つ選べ。

  1. a.風力
  2. b.火力
  3. c.地熱
  4. d.原子力
  5. e.バイオマス

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は公衆衛生の環境分野から、再生可能エネルギーの定義を問う問題だ。ポイントは「再生可能」という言葉が何を指しているか。発電方法の見た目ではなく、エネルギーの「源」が自然に補充されるかどうかで判断するんだ。
医学生医学生
正直、医師国家試験でエネルギーの問題が出るのは意外でした。公衆衛生の講義で地球環境の話はありましたけど、二酸化炭素を出さないものが再生可能、という理解で合っていますか。
ドクタードクター
そこが一番の落とし穴だね。再生可能エネルギーとは、太陽や地球の自然の営みで絶えず補充され、人間が使う速さを上回って回復するため、事実上尽きないエネルギー源のこと。二酸化炭素を出すかどうかは別の軸なんだ。対になるのが、使えば減っていく枯渇性エネルギーで、石油・石炭・天然ガスといった化石燃料や、ウランなどの核燃料がこれにあたる。
医学生医学生
なるほど、「源が尽きるかどうか」で分けるんですね。では風力はどうでしょう。風っていつも吹いているわけではないですけど。
ドクタードクター
風は、太陽の熱で大気が温まる場所とそうでない場所の気圧差で生じる。だから太陽が照らし続ける限りなくならない。天候で出力が変わるのは課題だけれど、源が尽きないという意味で再生可能エネルギーだ。燃料を燃やさないので、発電中に二酸化炭素や大気汚染物質もほとんど出さない。
医学生医学生
地熱も、地球の中の熱を使うので尽きない、という理屈でしょうか。
ドクタードクター
その通り。地熱は放射性元素の崩壊熱や地球形成時の熱が地表近くまで伝わってきたもので、地球はごくゆっくりとしか冷えないから、人間の時間の尺度では事実上なくならない。天候に左右されず安定して発電できるのが長所で、火山の多い日本は地熱資源が豊富とされているよ。
医学生医学生
バイオマスは少し迷いました。木や生ゴミを燃やすなら、火力と同じで二酸化炭素を出しますよね。
ドクタードクター
いい疑問だね。確かに燃やせば二酸化炭素は出る。でもその炭素は、植物が成長する間に大気中から取り込んだものだ。だから収支としては大気中の二酸化炭素を増やさないと考えられ、これを「カーボンニュートラル」という。しかも植物は育てればまた生えてくるので、源も再生する。間伐材や家畜の糞尿、食品廃棄物、下水汚泥なども含まれ、燃やすだけでなく発酵させてメタンガスやエタノールにして使うこともある。
医学生医学生
同じ「燃やす」でも、何億年もかけてできた化石燃料とは違う、ということですね。火力発電は、その化石燃料を燃やすから枯渇性なんですね。
ドクタードクター
そう。石炭・石油・液化天然ガスは埋蔵量に限りがあって、人間が使う速さで補充されることはない。しかも燃焼で二酸化炭素に加えて、硫黄酸化物や窒素酸化物、粒子状物質も出す。ここが公衆衛生とつながる部分だね。
医学生医学生
原子力はどうですか。発電中に二酸化炭素はほとんど出ないと習ったので、再生可能に入れたくなります。
ドクタードクター
まさにこの問題の引っかけだ。原子力の燃料であるウランは鉱物資源で、埋蔵量に限りがある。だから再生可能エネルギーではない。ただし、原子力は再生可能エネルギーとまとめて「非化石エネルギー」と呼ばれることがある。「非化石」と「再生可能」を混同しないことが大切だよ。
医学生医学生
整理すると、風力・地熱・バイオマスが再生可能で、火力と原子力は資源に限りがあるので枯渇性。原子力は非化石だけど再生可能ではない、ということですね。
ドクタードクター
完璧だ。ほかに太陽光、太陽熱、水力、大気中の熱なども再生可能エネルギーとして法令に挙げられていて、波力や潮汐力も含めて説明されることが多い。
医学生医学生
医師としては、エネルギーの話がどう健康に関わってくるのかも気になります。
ドクタードクター
大事な視点だね。化石燃料の燃焼は、二酸化炭素による地球温暖化、硫黄酸化物・窒素酸化物による酸性雨、PM2.5などによる大気汚染の原因になり、呼吸器疾患や循環器疾患のリスクを高める。国際的な温暖化対策の枠組みとして、1997年採択の京都議定書と2015年採択のパリ協定も一緒に覚えておこう。
医学生医学生
臨床実習で喘息の患者さんを担当したとき、大気汚染で症状が悪化しうると聞いたのを思い出しました。エネルギーの選び方も、患者さんの健康と無関係ではないんですね。
ドクタードクター
その通り。一方で再生可能エネルギーにも課題はあって、太陽光や風力は出力が不安定で、エネルギー密度が低く広い土地が要り、コストも高い。風力発電では騒音や低周波音が周辺住民に与える影響が環境保健上の課題とされている。長所と課題の両方を知っておくと、環境と健康の問題を偏りなく考えられるよ。

まとめ

再生可能エネルギーとは、自然の営みによって絶えず補充され事実上尽きることのないエネルギー源で、太陽光・風力・水力・地熱・太陽熱・バイオマスなどが該当します。火力(化石燃料)と原子力(ウラン)は資源に限りがある枯渇性エネルギーであり、原子力は発電時に二酸化炭素をほとんど出さないものの再生可能エネルギーではなく、「非化石エネルギー」に分類される点が頻出の引っかけです。バイオマスは燃焼で二酸化炭素を出しても、植物が成長時に吸収した炭素であるためカーボンニュートラルと考えられます。化石燃料の燃焼は地球温暖化・酸性雨・大気汚染を通じて呼吸器・循環器疾患のリスクを高めるため、エネルギー源の理解は環境保健を考える土台になります。

解答・解説

正解はa, c, eです

再生可能エネルギーとは、太陽や地球の自然の営みによって絶えず補充され、使った分を上回る速さで回復するため、事実上いつまでも使い続けられるエネルギー源のことである。ここでいう「再生可能」は、発電で得た電気が元に戻るという意味ではない。エネルギーの「源(ソース)」が尽きないという意味である。 これと対になるのが枯渇性エネルギーである。石油・石炭・天然ガスといった化石燃料や、ウランなどの核燃料がこれにあたり、地球上にある量が限られているため、使えば減っていく。 日本では「エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律」(エネルギー供給構造高度化法)とその施行令が、再生可能エネルギー源として次のものを挙げている。太陽光、風力、水力、地熱、太陽熱、大気中の熱その他の自然界に存する熱、バイオマスである。 したがって、選択肢のうちエネルギー源が自然に補充されるもの(風力、地熱、バイオマス)を選び、埋蔵量に限りのある資源を燃料とするもの(火力、原子力)を除けばよい。

選択肢考察

  1. ○a.  風力

    風は、太陽の熱で大気が温まる場所とそうでない場所との間に生じる気圧の差によって起こる。太陽からの放射が続く限り風もなくならないので、再生可能エネルギーである。風車でタービンを回して発電し、燃料を燃やさないため、発電中に二酸化炭素や大気汚染物質をほとんど出さない。一方で、天候によって出力が変わりやすく、騒音や低周波音が周辺住民に及ぼす影響が環境保健上の課題として挙げられている。

  2. ×b.  火力

    火力発電は、石炭・石油・液化天然ガス(LNG)などの化石燃料を燃やして得た熱で蒸気を作り、タービンを回す方式である。化石燃料は数億年かけてできた資源で、埋蔵量に限りがあり、人間が使う速さで補充されることはない。そのため枯渇性エネルギーに分類される。燃焼の際に二酸化炭素(地球温暖化の原因)、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)、粒子状物質などを排出する点も問題になる。

  3. ○c.  地熱

    地熱は、地球内部の熱(放射性元素の崩壊熱や、地球が形成されたときの熱)が地表近くまで伝わってきたものである。地下のマグマだまりで温められた蒸気や熱水を取り出して発電や暖房に使う。地球はごくゆっくりとしか冷えないため、人間の時間の尺度では事実上なくならず、再生可能エネルギーとして扱われる。天候に左右されず、安定して発電できるのが長所である。火山の多い日本は地熱資源が豊富とされる。

  4. ×d.  原子力

    原子力発電は、ウランなどの核燃料が核分裂するときに出る熱を使う。発電時に二酸化炭素はほとんど出ないが、燃料のウランは鉱物資源で埋蔵量に限りがあるため、再生可能エネルギーには含まれない。「二酸化炭素を出さない」ことと「再生可能である」ことは別の概念である点に注意する。原子力は再生可能エネルギーとあわせて「非化石エネルギー」としてまとめられることはある。

  5. ○e.  バイオマス

    バイオマスは「再生可能な、生物に由来する有機性資源で、化石資源を除いたもの」と定義される。木材や間伐材、家畜の糞尿、食品廃棄物(生ゴミ)、下水汚泥、サトウキビやトウモロコシなどの作物がこれにあたる。燃やしたり発酵させてメタンガスやエタノールを作ったりして利用する。燃やせば二酸化炭素が出るが、その炭素は植物が成長する間に大気中から取り込んだものである。そのため、収支としては大気中の二酸化炭素を増やさないと考えられ、この性質を「カーボンニュートラル」という。資源も植物の成長によって再び生み出されるので、再生可能エネルギーに含まれる。

エネルギー源の分類

・再生可能エネルギー:太陽光、太陽熱、風力、水力、地熱、バイオマス、大気中の熱その他の自然界に存する熱。波力や潮汐力も、自然に補充されるエネルギーとして再生可能エネルギーに含めて説明されることが多い ・枯渇性エネルギー:化石燃料(石油、石炭、天然ガス)、核燃料(ウラン) ・非化石エネルギー:再生可能エネルギーに原子力を加えたもの。化石燃料に対する概念である

再生可能エネルギーの長所と課題

・長所:資源がなくならない。発電中に温室効果ガスをほとんど出さない(バイオマスはカーボンニュートラル)。国内で調達でき、エネルギー自給率の向上につながる ・課題:太陽光や風力は天候や時間帯で出力が変わる。エネルギー密度が低く、広い土地が要る。コストが高い。そのため、現在でも世界の主なエネルギー源は化石燃料である

公衆衛生との関わり

・化石燃料の燃焼は、地球温暖化(二酸化炭素)、酸性雨(SOx、NOx)、大気汚染(PM2.5など)の原因になり、呼吸器疾患や循環器疾患のリスクを高める ・地球温暖化対策の国際的な枠組みには、京都議定書(1997年採択)やパリ協定(2015年採択)がある

POINT

・再生可能エネルギーとは、自然の力で絶えず補充され、事実上尽きることのないエネルギー源である ・太陽光、風力、水力、地熱、太陽熱、バイオマスなどが該当する ・火力(化石燃料)と原子力(ウラン)は資源に限りがあり、枯渇性エネルギーである ・原子力は二酸化炭素をほとんど出さないが、再生可能エネルギーではない ・バイオマスはカーボンニュートラルと考えられている

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。