StudyMed医師国家試験

表面がざらつくかどうか―病変の「深さ」で見抜く表皮の病気

第103回医師国家試験 C問題 第8問

国試問題にチャレンジ

第103回 C問題 第8問

表皮に変化がみられるのはどれか。

  1. a.蕁麻疹
  2. b.網状皮斑
  3. c.接触皮膚炎
  4. d.結節性紅斑
  5. e.蜂巣炎〈蜂窩織炎〉

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、皮膚疾患を「病変がどの層にあるか」で整理する問題だ。皮膚は外側から表皮・真皮・皮下組織の3層。選択肢それぞれの主病変がどの層にあるかを思い浮かべられれば解けるよ。
医学生医学生
正直、皮膚科の病名は見た目で覚えていて、どの層の病気かはあまり意識していませんでした。
ドクタードクター
そういう人は多いね。でも層を意識すると、見た目の理由まで説明できるようになる。表皮に病変があると、鱗屑や痂皮、小水疱、びらんといった「表面の変化」が出る。真皮や皮下だけの病変だと、赤みや盛り上がり、しこりはあっても表面はなめらかなままなんだ。
医学生医学生
なるほど、表面がざらついたり、じくじくしたりしているかが手がかりになるんですね。
ドクタードクター
その通り。では蕁麻疹から考えよう。膨疹は盛り上がるけど、表皮の病気だと思う?
医学生医学生
盛り上がるので表皮かと思いましたが、跡を残さず消えるということは、もっと深いところでしょうか。
ドクタードクター
いい推論だね。蕁麻疹は肥満細胞から放出されたヒスタミンなどで真皮上層の血管透過性が亢進し、一過性の浮腫が起こる病態だ。表皮は変化しないから、膨疹は数時間から24時間以内に鱗屑も痂皮も残さず消える。浮腫が真皮深層から皮下に及ぶと血管性浮腫になる。
医学生医学生
網状皮斑は、膠原病内科の実習で抗リン脂質抗体症候群の患者さんの下肢に網目状の紫色の模様を見ました。あれは血管の病変ですよね。
ドクタードクター
そう。真皮深層から皮下組織境界部の小動脈の血流障害で、周囲の静脈側に血液がうっ滞して網目状に見える。寒冷による生理的なもののほか、結節性多発動脈炎やコレステロール塞栓症なども原因になる。病変は血管にあって、表皮は変化しない。
医学生医学生
結節性紅斑は脂肪織炎だと病理の講義で習いました。
ドクタードクター
正確には、脂肪小葉を仕切る隔壁に炎症が起こる隔壁性脂肪織炎だね。下腿伸側に圧痛のある紅色の結節ができ、溶連菌感染、サルコイドーシス、炎症性腸疾患、ベーチェット病などが誘因になる。皮下の病変だから表皮は保たれ、潰瘍化せずに治る。
医学生医学生
蜂窩織炎は赤く腫れて痛いので、皮膚全体の炎症というイメージでした。
ドクタードクター
主に黄色ブドウ球菌やレンサ球菌による真皮深層から皮下組織の急性化膿性炎症で、好中球浸潤がびまん性に広がるから境界不明瞭な発赤・腫脹・熱感・疼痛になる。主病変は深いところにあって、表皮ではない。より浅い真皮の感染で境界明瞭な紅斑になるのが丹毒だ。
医学生医学生
となると、表皮に変化がみられるのは接触皮膚炎ですね。かぶれると小さな水疱やじくじく、かさぶたができます。
ドクタードクター
正解。接触皮膚炎は湿疹・皮膚炎群の代表で、刺激性のものとⅣ型アレルギーによるアレルギー性のものがある。組織では表皮の角化細胞どうしの間に浮腫が生じてスポンジ状に見える海綿状態が特徴で、進むと表皮内に小水疱ができる。真皮上層の血管周囲にリンパ球が浸潤し、表皮内にも入り込む。だから臨床では紅斑に丘疹、小水疱、びらん、痂皮、鱗屑が混在して痒みを伴うんだ。
医学生医学生
見た目の多彩さが、表皮の病理変化をそのまま反映しているんですね。
ドクタードクター
そういうこと。発展として、表皮の病理変化の名前もセットで覚えておこう。細胞間浮腫の海綿状態は湿疹、細胞内浮腫の風船様変性はヘルペスなどのウイルス性水疱症、細胞間接着が外れる棘融解は天疱瘡、角層に核が残る錯角化は乾癬、基底層が障害される液状変性は扁平苔癬やエリテマトーデスでみられる。
医学生医学生
CBTの病理問題で混同しがちなところです。「海綿=湿疹、棘融解=天疱瘡」と対で覚えます。
ドクタードクター
いいね。臨床では、発疹を見たらまず触って表面に変化があるかを確かめる習慣をつけよう。病変の深さが推定できれば、生検でどこまで組織を採るべきかの判断にもつながる。脂肪織炎を疑うなら皮下脂肪まで十分に含めて採取する必要がある、といった具合だ。

まとめ

皮膚疾患は病変の主座が表皮・真皮・皮下組織のどこにあるかで臨床像が変わり、表皮に病変があると鱗屑・痂皮・小水疱・びらんなど表面の変化が生じます。接触皮膚炎は湿疹・皮膚炎群の代表で、表皮の海綿状態(細胞間浮腫)と表皮内小水疱を特徴とするため、表皮に変化がみられます。一方、蕁麻疹は真皮上層の一過性浮腫、網状皮斑は真皮深層~皮下の小血管の血流障害、結節性紅斑は隔壁性脂肪織炎、蜂窩織炎は真皮深層~皮下の化膿性炎症で、いずれも表皮は保たれます。海綿状態・風船様変性・棘融解・錯角化・液状変性といった表皮の病理変化と代表疾患を対応づけておくと、発疹の見た目から病態を推定する力が身につきます。

解答・解説

正解はcです

皮膚は外側から表皮・真皮・皮下組織(皮下脂肪織)の3層からなる。皮膚疾患は、病変の主座(最も強く変化が起こっている層)がどこにあるかによって、臨床像(発疹の見た目)が大きく異なる。 表皮に病変があると、皮膚表面に鱗屑(ふけ状のくず)、痂皮(かさぶた)、小水疱、びらん、苔癬化などの「表面の変化」が現れる。一方、病変が真皮や皮下組織にとどまる場合は、紅斑・膨疹・硬結・結節などとして触れたり見えたりはするが、皮膚表面はなめらかなままで、鱗屑やびらんは原則として生じない。 本問では、選択肢の各疾患の病理学的な主病変の部位を思い浮かべればよい。表皮に変化を起こすのは、湿疹・皮膚炎群の代表である接触皮膚炎で、表皮細胞の間に浮腫が生じる「海綿状態(spongiosis)」が特徴である。ほかの選択肢はいずれも主病変が真皮または皮下組織にある。

選択肢考察

  1. ×a.  蕁麻疹

    誤り。蕁麻疹は、肥満細胞から放出されたヒスタミンなどの化学伝達物質により真皮上層の血管透過性が亢進し、一過性の浮腫が生じる疾患である。主病変は真皮(上層)の浮腫で、表皮には変化がない。そのため膨疹(皮膚の限局性の盛り上がり)は数時間~24時間以内に跡を残さず消え、鱗屑や痂皮を伴わない。浮腫が真皮深層から皮下組織に及ぶものは血管性浮腫(クインケ浮腫)とよばれる。

  2. ×b.  網状皮斑

    誤り。網状皮斑は、皮膚に網目状・樹枝状の紫紅色斑がみられる状態である。真皮深層から皮下組織境界部の小動脈の血流障害(血管の攣縮・閉塞や血管炎など)により、その周囲の静脈側に血液がうっ滞して生じる。原因として、寒冷による生理的なもののほか、結節性多発動脈炎、抗リン脂質抗体症候群、コレステロール塞栓症、膠原病などがある。病変は真皮・皮下組織の血管にあり、表皮は変化しない。

  3. ○c.  接触皮膚炎

    正しい。接触皮膚炎は、皮膚に触れた物質による刺激(刺激性接触皮膚炎)や、Ⅳ型(遅延型)アレルギー(アレルギー性接触皮膚炎)によって起こる湿疹・皮膚炎である。組織学的には、表皮の角化細胞どうしの間に浮腫(細胞間浮腫)が生じてスポンジ状に見える「海綿状態」が特徴で、これが進むと表皮内に小水疱ができる。真皮上層には血管周囲のリンパ球浸潤もみられ、リンパ球は表皮内にも入り込む(表皮内浸潤)。表皮に病変があるため、臨床的には紅斑に加えて丘疹、小水疱、びらん、痂皮、鱗屑などが混在し、瘙痒を伴う。

  4. ×d.  結節性紅斑

    誤り。結節性紅斑は、主に下腿伸側に圧痛を伴う紅色の皮下結節が多発する疾患で、病理学的には皮下脂肪織の脂肪小葉を仕切る隔壁(葉間隔壁)に炎症が起こる「隔壁性脂肪織炎(septal panniculitis)」である。炎症細胞浸潤(初期は好中球、のちにリンパ球・組織球)がみられ、組織球が集まった肉芽腫(Miescher放射状肉芽腫)を形成することもある。溶連菌感染、サルコイドーシス、炎症性腸疾患、ベーチェット病、結核、薬剤、妊娠などが誘因となる。病変は皮下組織にあり、表皮は保たれ、潰瘍化せずに治る。

  5. ×e.  蜂巣炎〈蜂窩織炎〉

    誤り。蜂巣炎(蜂窩織炎)は、主に黄色ブドウ球菌やレンサ球菌による真皮深層から皮下組織にかけての急性化膿性炎症である。好中球を主体とする炎症細胞浸潤が組織内をびまん性に広がり、境界不明瞭な発赤・腫脹・熱感・疼痛を生じ、発熱を伴うことも多い。病変の中心は真皮深層~皮下脂肪組織で、表皮に主病変はない。なお、より浅い真皮層の感染で境界明瞭な紅斑を呈するものは丹毒とよばれる。

皮膚の構造と主な病変部位

・表皮:角化細胞(ケラチノサイト)が主体で、基底層・有棘層・顆粒層・角層からなる。メラノサイト、ランゲルハンス細胞も存在する。血管はない。 ・真皮:膠原線維・弾性線維からなる結合組織で、血管、リンパ管、神経、付属器(毛包・汗腺・脂腺)を含む。 ・皮下組織:脂肪小葉とそれを仕切る結合組織性の隔壁からなる。

表皮の主な病理変化

・海綿状態(spongiosis):表皮細胞間の浮腫。湿疹・皮膚炎(接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎など)の特徴。 ・風船様変性(ballooning degeneration):表皮細胞内の浮腫で細胞が膨化する。ウイルス性水疱症(単純ヘルペス、水痘・帯状疱疹)でみられる。 ・棘融解(acantholysis):表皮細胞間の接着が外れる。天疱瘡でみられる。 ・錯角化(parakeratosis):角層に核が残る。尋常性乾癬などでみられる。 ・表皮肥厚(acanthosis):表皮が厚くなる。乾癬、慢性湿疹などでみられる。 ・液状変性(空胞変性):表皮基底層の障害。扁平苔癬、エリテマトーデス、多形紅斑などでみられる。

主病変の部位による整理

・表皮:湿疹・皮膚炎、乾癬、天疱瘡(表皮内水疱)、ウイルス性水疱症など ・真皮:蕁麻疹(真皮上層の浮腫)、丹毒、皮膚血管炎など ・真皮~皮下組織の血管:網状皮斑 ・皮下組織:結節性紅斑(隔壁性脂肪織炎)、蜂巣炎(真皮深層~皮下)

臨床像との対応

表皮に変化があると鱗屑・痂皮・小水疱・びらんなどが生じ、表面がざらつく。真皮・皮下組織のみの病変では、紅斑・膨疹・結節などを呈するが表面は平滑である。発疹を見て「表面に変化があるか」を確かめることが、病変の深さを推定する手がかりになる。

POINT

・接触皮膚炎は湿疹・皮膚炎群に属し、表皮の海綿状態(細胞間浮腫)と表皮内小水疱が特徴である。 ・蕁麻疹:真皮上層の一過性浮腫(表皮は正常)。 ・網状皮斑:真皮深層~皮下組織の小血管の血流障害。 ・結節性紅斑:皮下脂肪織の隔壁性脂肪織炎。 ・蜂巣炎:真皮深層~皮下組織の急性化膿性炎症。 ・鱗屑・痂皮・小水疱・びらんがあれば表皮の病変を考える。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。